女性も男性もオフィスワーカーの方なら首周りから背中にかけて生じる、重くて鈍い痛みに悩んでいる人は多いでしょう。今や腰痛と並び、国民病とも言われる「肩こり」の原因はいくつかありますが、主にデスクワークで硬くなったあなたの体にあります。今回は、そんな肩こりの原因を解説し、肩こりを解消するためのヨガポーズをご紹介します。
OLで事務職をやっている人や開発エンジニアなど、女性や男性に関わらずオフィスでデスクワーク中心の生活を送っている方で肩こりに悩みを抱える方は多いのではないでしょうか?週に一度は、帰宅途中で整体に寄り、首から肩にかけての背中全体の凝りをほぐさないとやっていられない、なんて人もいるかもしれませんね。
肩こりに悩むのは貴方だけではない
厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、「気になる自覚症状」において、女性は第1位、男性は肩こりが第2位となっており、まさに国民病とまで言われるように。
肩こりに悩んでいるのはあなただけではないのです。
肩こりは、首、背骨から肩甲骨周辺にまで感じる重たく、にぶい痛みのような症状。ひどい時には肩こりが頭痛を生むこともあります。なんとも言えないあの鈍痛から感じる全身の不調は、主に同じ姿勢を保った状態を長時間続けることで起こります。
デスクで長時間、仕事する人、まさに現代のオフィスワーカーであれば誰でも肩こりになりやすいと言えるのです。
肩こりを生む生活習慣
肩こりを生む要因は様々ですが、上記に示した「同じ姿勢を保ったままの状態でいる」他、「眼精疲労」、そして「運動不足」、さらに「ストレス」と言われており、これらは全てOLやオフィスワーカーの環境に共通するものとなっています。
長時間のPC操作は目を疲れさせるだけではありません。最近、ノートPCが主流になったことで目線と画面の高さが水平ではなく、画面を見下ろすことで首から背骨が曲がり、猫背の状態のまま、長時間デスクワークをせざるを得ない状況になっています。また、スマホを見ることも同様で、首を傾けたままでいる猫背の状態を何時間も保つことになります。
でも、なぜ、同じ状態を維持すると肩こりを生むのか?
肩こりは体の硬さと血行不良
肩こりの原因は、主に背中まわりの筋肉が凝り固まること。つまり筋肉が緊張することから血管を圧迫し、血管を通して栄養素や酸素をスムーズに運べないことから老廃物が蓄積。その時、体の異常を検知して発せられるヒスタミンやブラジキニンが、こりや疲労、痛み、不調、不快感を感じさせるのです。※1
よって肩こり解消のためには、首から肩、そして背中の筋肉の緊張を解消し、血流の流れを改善する必要があります。その最適な方法の一つが、筋肉の緊張を緩和させ、心身ともにリラックスできるヨガなのです。
肩・背中をストレッチ – 5つのオススメヨガポーズ
大切なのは肩の部位を局所的にほぐすのではなく、首、肩甲骨周辺を中心に背中全体をほぐすこと。
実際に、次の5つのアーサナ(ヨガポーズ)で、主に肩甲骨周辺から肩、首まで広く覆っている僧帽筋(そうぼうきん)の凝りをほぐしていきます。まずは背骨を中心に前後に屈曲することを意識しつつ、体をねじることで関節の可動域を広げながら、肩甲骨周辺の筋肉の緊張を緩和していきましょう。
1. 猫のポーズ / キャット&カウ(マルジャリャーサナ、ヴィヤガラーサナ)
ヨガ初心者の方も必ずといってほどヨガレッスンでとっているポーズかもしれません。キャット&カウは、オーソドックスで簡単なながら、正しいポーズをとることで肩こりを解消する効果が大きい基本中の基本のポーズです。
猫のポーズ(虎のポーズ)の姿勢で、体幹などのインナーマッスルを意識し、背中の伸びを前後交互に行います。頭頂から首、脊柱を中心に背中全体をストレッチさせる効果があり、姿勢改善を行う上でも有効なポーズです。
猫のポーズのとり方
- まず肩の真下に手首、腰の真下に膝がくるように四つ這いになる。
- 息を吐きながら尾骨を下に向けて背中を丸め、目線をお腹(おへそあたり)に向ける。
- 息を吸いながらお尻の内側に背中をしならせ、胸を開いて顔を正面へ。
- 何度か繰り返し、四つん這いに戻る。
ヨガポーズ詳細:猫のポーズ / キャット&カウ(マルジャリャーサナ、ヴィヤガラーサナ)
2. 弓のポーズ(ダヌラーサナ)
弓のポーズは、背骨を後屈の状態で伸ばしながら同時に肩甲骨を縮めるポーズです。
加齢に伴って柔軟性を失う肩甲骨はもちろん、背中全体の柔軟性を取り戻せます。また、このポーズによって腹部内臓の調子を整えることができると言われています。
弓のポーズのとり方
- うつ伏せになる。息を吐きながら膝を曲げる。
- 両手を後方に伸ばし、左手で左の足首、右手で右の足首を掴む。
- 息を吐ききるようにして、膝を床から離し、体を伸ばしながら両手をさらに上げ、胸も反らせる。
- 足が完全に上がるようになってから、両腿、両膝、両足首をお互いに合わせていく。
- 息を吐きながら足首から手を離し、足を伸ばす。
ヨガポーズ詳細:弓のポーズ(ダヌラーサナ)
3. 魚のポーズ(マッツヤーサナ)
魚のポーズ(マッツヤーサナ)は、背中、特に肩甲骨周辺がよく伸展し、胸も広がることで呼吸が十分に行えます。
同時に首を伸ばすので甲状腺を刺激します。また、骨盤周辺の関節を柔軟にすることができます。
魚のポーズのとり方
- 仰向けに寝そべった状態から腕を腰に移動させ、手のひらを臀部の下の床につく。
- 前腕を床に押し付け、肘は開かずに上腕と方を上げ、胸を山なりにする。
- 胸骨を持ち上げ、恥骨から喉までのアーチをさらに湾曲させる。
- 左右の肩甲骨をすり合わせ、方を下げながらさらに胸を上げる。
- 息を吐きながらゆっくりと元の状態に戻る。
ヨガポーズ詳細:魚のポーズ(マッツヤーサナ)
4. 捻った椅子のポーズ(パリヴリッタ ウトゥカタ アーサナ)
捻った椅子のポーズ(パリヴリッタ ウトゥカタ アーサナ)は、肩から胸、ヒップまでの筋力を強化し、可動性を高めるポーズです。特に背骨を軸に肩甲骨周辺から背中全体にねじりを加えます。
また、伝統的な文献によると血行を促進し、消化力を高めると言われています。
捻った椅子のポーズのとり方
- 足を腰幅に開き、タダーサナ(山のポーズ)で立つ。
- 息を吸いながら腕を頭上に伸ばし、背筋を伸ばす。
- 息を吐きながら膝を曲げて前屈し、胸を腿に近づけて両手を床につく。
- 胸は上げたまま腕を指先まで伸ばし、背骨と腕を床と平行にする。
- 臀部をかかとに近づけ、腕を背骨をさらに上へ伸ばす。
- 両手を心臓の前に下ろし、合掌する。
- 息を吐きながら胸を右に向け、身体を前に傾けて、左肘を右膝の外側に固定する。
- 肘で膝を押しつつ、膝で肘を押し返して、さらにひねりを加える。
- 仙骨から上に向けて、上体が螺旋状にねじれているのを感じる。
- 息を吸いながらポーズを解く。
ヨガポーズ詳細:捻った椅子のポーズ(パリヴリッタ ウトゥカタ アーサナ)
5. ワシのポーズ(ガルダーサナ)
ワシのポーズ(ガルダーサナ)は、足首、ふくらはぎから大腿、股関節までのストレッチ効果とともに、肩、肩甲骨周辺のストレッチ効果を得られるポーズです。また、バランス感覚の向上が要求され、集中力が高まると言われています。
ワシのポーズのとり方
- ターダアサナの姿勢で立ち、右足を曲げる。
- 左足を右膝の上、腿あたりに乗せ、左右の腿をぴったりとつける。
- 左足を右足の後ろに回し、右足首にひっかけるようにする。
- 腕を胸の高さまで上げ、右肘を左肘に乗せる。
- 右手を右に回し、左手は左に回して絡ませて手のひらを合わせる。
- 息を吸って背筋を伸ばし、吐きながら膝を曲げて深める。
- 息を吸いながら膝を伸ばし、吐きながら手を解いて戻る。
ヨガポーズ詳細:ワシのポーズ(ガルダーサナ)
ヨガ習慣化で肩こり知らずの体に
同じ姿勢を保つことが筋肉を緊張させる要因となり、それが血行不良を生み、そして肩こりを生じさせる。別の側面から言えば、「体が硬い」ことも大きな要因でしょう。そもそも人間の体の優れた点は、多様な動作を可能にしたものであって、普通の生活を通して四肢を十分に機能させることができれば肩こりなどは起こりえません。
その背景には社会の発展と引き換えに人間に生じた運動不足も大きく影響しているはずで、肩こりはまさに現代病なのです。整体に通うことも一つの改善方法ですが、外部から凝りをほぐすもので根本治療とはなりません。
関節の可動域が広くなる、硬くなった筋肉が柔軟になることで、肩こり知らずになれるのです。そのためにも、毎日の朝をヨガからはじめる生活に変えてみてはいかがでしょうか?自宅でヨガを続け、習慣化できれば楽しいですし、まさに「肩こりになりにくい体」をつくることが可能なのです。
今回紹介したポーズによって自分の体を変えることで、肩こりとは無縁の人になってみてはいかがでしょうか?