ヨガポーズは姿勢を整えるものでもありますが、より深めるためには、呼吸法で取り込んだプラーナを全身にくまなく行き渡らせることが大切。そのためにベテランヨギーニの多くが実践するチャクラとエネルギーについて、そしてエネルギーを意識しやすいヨガポーズまでを解説します。
以前の記事でプラーナヤーマを意識したヨガ呼吸法を紹介しました。今回はヨガのレベルアップのために、さらにもう一歩進め、取り込んだエネルギーを全身に行き渡るようにアーサナをとってみましょう。
ヨガとは生命エネルギーを行き渡らせるもの

ヨガポーズやアーサナの目的と聞かれれば、大半のヨガをやっている人は姿勢を良くすること、もしくは柔軟性を高めることと答えるはず。もちろん、それは間違いではありませんが、ベテランヨギーニの考え方は少し違います。
ヨガ呼吸法で取り込んだエネルギー(プラーナ)を、呼吸法(プラーナヤーマ)とヨガポーズで全身に隈なく行き渡らせると考えるのです。ヨガの伝統によると、ヨガは古くから生命エネルギーを取り込み、身体中に行き渡せる術だと考えられてきたのです。
エネルギー向上の鍵は背骨とチャクラにあり

また、私たちの身体には7つのエネルギーの溜まり場があると考えられており、それがチャクラです。※ 取り込まれたエネルギーは、身体に張り巡らされたナーディと呼ばれる経路を通り身体中に行き渡るとされ、その中にチャクラと繋がる3つの経路があります。
それが、スシュムナーとイダー、ピンガラです。
1. スシュムナー
体の軸となる背骨に沿ってあると考えられるエネルギーの経路。
2. イダー
月に象徴されるエネルギーの経路。左の鼻腔をつかさどるとされ、左鼻で呼吸をすると、イダーが優勢になり、身体の温度を下げ、リラックスを与えます。
3.ピンガラ
太陽に象徴されるエネルギーの経路。右の鼻腔をつかさどるとされ、右鼻で呼吸をすると、ピンガラが優勢になり、体の温度を上げ、活気を与えます。
ヨガの伝統では、スシュムナーが背骨に沿ってあると考えられ、イダーとピンガラは、スシュムナーに沿って、DNAのように螺旋を描いて交差しながら各チャクラを結んでいると考えられています。つまり、尾骨から頭頂には、背骨に沿って第一〜七チャクラが配置され、各チャクラに繋がるエネルギーの通り道が上記3つの経路というわけです。
ベテランのヨギーニは、プラーナヤーマ(ヨガ呼吸法によるエネルギーのコントロール)に加えて、エネルギーの滞りを防ぎ、スムーズな流れを産むために、特に背骨とチャクラの関係を意識してアーサナをとっているのです。
※ ここではチャクラについて詳細は語りませんが、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。チャクラを中心にヨガとアーユルヴェータとの関係と、第1〜7チャクラまで詳しく解説する記事へのリンクがあります。
もっと詳しく:7つのチャクラを理解してヨガとアーユルヴェーダを深めよう
あながち嘘ではない?! チャクラと自律神経

ちなみに、背骨に沿って存在するとされる第1〜7チャクラも、生命エネルギーされるプラーナ、そしてその通り道であるスシュムナーとイダー、ピンガラも全て目に見えるものではありません。現代の科学ではその存在も確認されていない、ヨガやアーユルヴェーダの世界の中での考え方です。
しかし、背骨は脳から身体中へ張り巡らされる自律神経の経路でもあり、現代の医療科学において重要であることは疑う余地はありません。自律神経は背骨を通り各臓器へと接続され、それらを制御しています。背骨に歪みがあれば、筋肉の緊張を生み、適切な神経伝達が阻害されることで、体の様々な不調が発生するとの見方もあります。
ヨガは身体の機能と密接に関係している

紀元前から続くヨガやアーユルヴェーダの歴史は5000年とも言われています。その時代には、当然のことながら科学はありませんでしたが、心身の健康を獲得する上で背骨に着目するアプローチは、偶然にも現代の医療科学と一致しているのです。
なぜ、古代のインドの人々は科学がない時代にそんなことを知っていたのか?古代インドの智慧としかいいようがありませんが、ヨガやアーユルヴェーダの効果は、ここへきてその多くの部分が科学的に証明されているのです。※1
話を戻しますが、つまり、私たちはヨガのポーズをとることによって背骨の歪みを矯正し、エネルギーの流れをよくすることで各臓器の働きを良くすることができます。普段は美容や健康のためと気軽に行っているヨガは、より深く知れば知るほど私たちの身体の機能と密接に関係していることがわかります。
ヨガは自分の健康を獲得する知恵と術と言えるのです。
エネルギーを意識してポーズをとる
さあ、ヨガの奥深さを知ったら、あなたもエネルギーの流れを意識してアーサナをとってみましょう。
エネルギーを意識することでこれまでとは全く違うヨガ体験となるはずです。
1. まずはキャット&カウで背骨の動きを意識
超基本的とも言えるキャット&カウ。どのスタジオでも必ずと言って良いほどスタジオで登場するポーズですが、ビギナーからベテランまで背骨の可動を意識するには最も適したポーズと言えるでしょう。
ちなみに筋力トレーニングでも力を働きかける部位を意識するようにと、よく言われますが、ただ単にポーズをとるのではなく、背骨の動きを意識しながらやることが大切。椎骨一つ一つの動きを意識する様に、内側と外側の収縮を意識しながらゆっくりとやってみましょう。もちろん呼吸を止めてはいけません。
キャット&カウをとる際の手順や注意等は以下のガイドを確認。
ヨガポーズガイド:キャット&カウ
2. 下向きの顔の犬のポーズでエネルギーの方向を確認(立位)
キャット&カウからのシークエンスで定番なのが、下向きの顔の犬のポーズ(ダウンドッグ)。
椎骨の動きを意識した後のダウンドッグでは、丹田から上半身は大地へ向かっているエネルギー。丹田からお尻にかけては、空へ向けて上方へのエネルギー、そして下半身は骨盤から下の、ハムストリングスからふくらはぎ、アキレス腱、かかとまで脚全体を、エネルギーが大地へ向かっているかのような意識をしてみましょう。
下向きの顔の犬のポーズをとる際の手順や注意等は以下のガイドを確認。
ヨガポーズガイド:下向きの顔の犬のポーズ
3. 猿王のポーズ(座位)
猿王のポーズは、エネルギーを全方位へ向けて意識しやすいポーズ。
股関節を軸に前後、そして上半身は上方へ、下半身は大地へとエネルギーの方向をしっかりと意識してとりましょう。背骨全体への意識を忘れずに。
猿王のポーズをとる際の手順や注意等は以下のガイドを確認。
ヨガポーズガイド:猿王のポーズ
4. 弓のポーズ(後屈)
弓のポーズは丹田を軸に、背骨全体を後屈させ、同時に肩甲骨を縮ませ、胸部を広げるポーズ。
胸部を広げることで前方を足首を持つことで後方へ、そして丹田では下方を意識するなど全方位へのエネルギーをしっかりと意識してポーズをとりましょう。
弓のポーズをとる際の手順や注意等は以下のガイドを確認。
ヨガポーズガイド:弓のポーズ
5. 半分のマッチェンドラのポーズⅠ(座位)
座位のポーズからもう一つ、半分のマッチェンドラのポーズⅠ(アルダマッツェーンドラーサナⅠ)を。
背骨をまっすぐに伸ばしながら捻りを加えるポーズで、ヒップと股関節を内側へ整えながら、上半身全体を反対側へ捻ることで内臓を整えます。背骨を軸としたエネルギーを意識しやすいポーズです。
半分のマッチェンドラのポーズⅠをとる際の手順や注意等は以下のガイドを確認。
ヨガポーズガイド:半分のマッチェンドラのポーズⅠ
エネルギーを意識するとヨガが変わり人生も変わる

ヨガで感じる心地よさ。これはこれでヨガを続ける素晴らしい理由になります。
しかし、さらに深めていきたい、もっと探求したいと思うなら、プラーナヤーマを意識した呼吸法。そして、今回紹介したようにチャクラとエネルギーをイメージしてポーズをとって見てください。
冒頭でご紹介したように、ヨガとはエネルギー(プラーナ)を取り込み、身体中に行き渡せる術でもあります。エネルギーを意識し、7つのチャクラに働きかければ心身が整い、自信や愛など実りある人生を歩むことができます。
これまでとは違ったヨガの側面に出会えるでしょう。