ポーズ(アーサナ)

太陽礼拝レベルアップ!ウルドヴァムカシュバーナーサナのミスアライメント

太陽礼拝Aに登場する7つ目のアーサナはウルドヴァムカシュバーナーサナ。腰痛改善や坐骨神経痛、および脊椎の異常などに効果的なポーズにもかかわらず、逆に腰を痛めてしまう方が多くいます。なぜか?今回も、チャック先生からご指導いただいたお写真をもとに、起こりがちなミスアライメントについてご説明します。

太陽礼拝Aに登場する7つ目のアーサナは、「ウルドヴァムカシュバーナーサナ」です。

今回も、まずはチャック先生のお手本から見ていきましょう。

「ウルドヴァムカシュバーナーサナ」の意味と効果

このポーズは、犬が頭をそらして伸びをしている姿に似ています。

ウールドヴァ(ウルドヴァ)は「上」、ムカは「向く」、シュバーナは「犬」という意味があることから、日本語名では「上向きの犬のポーズ」、英語では「Upward Facing Dog Pose(アップワードフェイシングドッグポーズ)」、略して“アップドッグ”とも呼ばれます。

背骨の力を強くするため、特に背中の柔軟性が欠ける人におすすめしたいアーサナです。背中の力を強くすることで、背中の痛みが取り除かれるほか、胸が広がるので、肺の弾力性が増して呼吸機能を高め、気持ちを前向きにします。

また、体幹を意識しながらポーズをとることで体幹を強化しながら腹部の柔軟性も高めます。また、骨盤周辺の血行も良くなるため、健康保持に役立つポーズです。

「ウルドヴァムカシュバーナーサナ」のミスアライメント

誰でも取れそうなウルドヴァムカシュバーナーサナですが、間違ったアライメントでこのポーズをとると、脊椎を痛めてしまい、腰痛や首・肩周りの凝りなどを引き起こし、健康保持どころか全身の疲労感が増してしまいますので要注意です。

それではありがちなミスアライメントを見てみましょう。

  1. 手の親指と人差し指が浮いている
  2. 手首より前に肩が出ている
  3. 肘が伸びすぎている
  4. 肩が前に飛び出ている
  5. 肩がすくんでいる
  6. つま先が内側に向いている
  7. 膝が外に向いている
  8. 腰を折っている
  9. 腹筋が緩んでいる
  10. 体幹が上に引き上がっていない
  11. 背骨の延長に頭頂がない
  12. 目線は無理に上を見ている

この中から、今回は特に起こりやすい4つのミスアライメントをピックアップして解説します。

4. 肩が前に飛び出ている

「ウルドヴァムカシュバーナーサナ」は、両腕で床を押す意識が強いため、両腕と肩が胸より前に出てしまう方がいらっしゃいます。しかし、このアーサナは、床を押すよりも、引く意識が大切です。

まず初めに肩甲骨全体を後ろに引いてから床を押すことで、頚椎が楽になり、身体の軸が上に伸ばされやすくなります。

6. つま先が内側に向いている

このアーサナをしているところを後ろから見ると、つま先が内側に向き、ハの字型になってしまいがちです。ですが、つま先が斜め内側に向いていると、伸ばす方向が定まらなくなってしまい、股関節から下肢全体を効果的に伸ばせなくなります。

正座をするとわかるのですが、ほとんどの方が正座をした時に、無意識に足を交差させて重ねていると思います。この座り方は足のしびれを軽減させるためには効果的なのですが、ヨガでは、足は重ねずに平行に伸ばします。

ここでも、ヨガの基本姿勢、ダーダーサナの足のポジションを意識して、かかとから足の人差し指までが真っ直ぐになるように調整するということです。人によっては、足の甲の筋肉が伸ばされて痛みを感じることがあるかもしれませんが、タオルを丸めて床と足の甲の間に挟むと少し楽になります。足の甲の筋肉も、自分の体重を支えるにはとても大切な筋肉です。少しずつ伸ばす練習をしましょう。

8. 腰を折っている

このアーサナを正しいインストラクションのもとで行わず、見よう見まねで行うと、必ず腰椎から身体を反らしてしまいます。それは、私たちの身体の構造的に、腰椎を反るのが得意だからです。脊柱は、頚椎、胸椎、腰椎でできており、それらは、椎体の厚みや大きさ、椎間関節の形状など、それぞれの部位ごとに特徴的な形をしています。

頚椎

頚椎は横から見ると高さが低くて薄く、第一頚椎は環椎といい、軸椎の第二頚椎とで環軸関節という関節を形成しています。この関節では特に頚椎の回旋を担っており、頚部の回旋全体の約8割がここで起こっているため、非常に広い可動域を持っているのが頚椎の特徴です。

胸椎

胸椎の特徴は、何よりも肋骨が付いていることですよね。そのため、前後の曲げ伸ばし(前屈・後屈)が少し制限されて、主に回旋が得意となります。

腰椎

腰椎は上半身の重みを支えるため、大きく、椎間関節もがっしりとしています。そのため、回旋や側屈などの横の可動域に制限があり、逆に、前後の曲げ伸ばし(前屈・後屈)が得意となります。

まとめると、頚椎と胸椎は回旋の横の動きが得意で、腰椎は前屈、後屈の縦の曲げ伸ばしが得意ということです。つまり、脊柱を伸ばす(反る)アーサナでは、脊柱のどこを使うかで反りやすさや負担のかかる位置がかわるということ、そして、後屈のポーズでは、身体の構造的に、曲げ伸ばしが得意な腰椎を反りやすいため、そこだけでポーズをとってしまいがちだということが理解できます。

しかし、胸椎は12個、腰椎は5個あり、胸椎と腰椎を足した17個でアーサナをとるのか、腰椎5個だけに集中してアーサナをとるのか、どちらに負担がかかるかは安易に想像できます。反るのが得意な腰椎ばかりに集中するのではなく、反るのが苦手な胸椎も使って、負担を分散させながらアーサナをとることがこのポーズの重要なポイントなのです。

その際に意識したいのが、「胸棘筋」という胸を張る筋肉。胸棘筋は前胸の深層に位置する筋肉で、ちょうど背中の中央あたりを意識するとわかりやすいかもしれません。胸棘筋を使うためには、まず、手を胸の横の床について軽く補助する程度にして、顎を引いたまま身体を起こしていきます。このとき、出来るだけ腰にストレスを集中させないように、お腹を少し引き込んで、お尻や脚には余計な力が入らないようにするのがコツです。

12.目線は無理に上を見ている

目線を無理に上に向けると、当然顎が上がりますよね。顎を突き出して身体を反っていくと、腰から中心に反っているのを感じると思います。後屈のポーズは、腰椎だけに集中させるのではなく、胸椎の伸展が大切です。さらに、胸椎の伸展には、顎の使い方と、恥骨を前に押し出すようなお腹の引き上げが重要です。目線が上に行きすぎて顎が突き出ると、首の後ろが詰まってお腹の力が抜けやすくなり、腰痛の原因を引き起こします。

ところが、顎を引き気味にして、鎖骨、胸骨を上に持ち上げるイメージで後ろに反ると、胸椎が先に出るため、重心が後ろに移動します。重心が後ろに移動した分、腹筋が入り、腰が安定します。目線は顎を引いた先の自然な位置を見るようにしましょう。

日常では使わない動作が組み込まれた太陽礼拝

現代の生活では、ほとんど身体を反る動作がなく、パソコンなしではいられない世の中になってきています。しかしキーボードを打っている姿勢はどんどん胸椎を硬くしていってしまいます。ヨガでは、身体を反るアーサナがたくさんあり、日常的にやらない動きをとるため、正しいアライメントを知らないと、脊柱を反ろうとしたときに安易に腰だけで折ってしまうのです。

腰椎だけに極度のストレスをかけてしまわないように、胸椎の柔軟性を鍛えることが、日常の腰痛防止のためにもとても重要になります。太陽礼拝では、二つ目のアーサナである「ウルドヴァハスターサナ」のような、脊椎の小さな伸展から胸椎の伸展を練習していくことができます。

「たとえヨガスタジオにいく時間がなくても、太陽礼拝だけでもするように」と、私はよく先生からアドバイスいただきましたが、太陽礼拝は、まさに日常で必要な筋肉を鍛えるためのアーサナがバランス良くまとまっています。

胸椎の使い方を知るためにも、是非、太陽礼拝を日々の練習に取り入れてみてくださいね。

ヨガポーズガイド上向きの顔の犬のポーズ(ウールドゥヴァムカシュヴァーナーサナ)

 


太陽礼拝を深く学ぶ記事

太陽礼拝の基礎

以下の記事にて太陽礼拝を取り上げています。太陽礼拝の意味や効果から太陽礼拝のシークエンスの詳細まで。これを読めば太陽礼拝の全てがわかります。

  1. 太陽礼拝の効果とシークエンスに込められた意味
  2. 太陽礼拝Aのシークエンスとアーサナ徹底解説
  3. 太陽礼拝Bのシークエンスとアーサナ徹底解説

太陽礼拝のアーサナを個別に解説

太陽礼拝に登場する各ポーズ一つ一つを詳しく解説しています。ポイントからありがちなミスアライメントまで、太陽礼拝を上達したいなら必ずチェック。ヨガ初心者の方はもちろん、ヨガインストラクターレベルの方にも役立つ内容です。

  1. 立ってるだけ?あなどってはいけないタダーサナの効果とポイント
  2. ターダアーサナのミスアライメントチェック
  3. ウルドヴァハスターサナのミスアライメントチェック
  4. ウッターナアーサナ、5つのミスアライメントチェック
  5. アルダウッターナアーサナのミスアライメントチェック
  6. アルダチャタランガダンダーサナのミスアライメントチェック
  7. チャタランガダンダーサナのミスアライメント
  8. ウルドヴァムカシュバーナーサナのミスアライメント
  9. アドムカシュバーナーサナのミスアライメント
早坂 理恵

早坂理恵 | Rie Hayasaka / Mangala Arati。女優。8歳でデビュー。演技の勉強を始めて間も無く、NHK朝の連続テレビ小説のキャストに選ばれる。18歳で上京し数々の現場で経験を積む中、持病である心臓の病と比較的新しい「脳脊髄液減少症」を発症。芸能活動を休止。現在、復帰したものの今もなお治療中。プライベートではヨガをライフワークとし、水素美容分野での活動(「水素美容のひみつ」著者)。全米ヨガアライアンス RYT500, RPYT(マタニティヨガ), RCYT(キッズ), シニアヨガインストラクター / アシュタンガヨガインストラクター / フィジカルトレーニングインストラクター / Yoga Ed. PI1・PI2修了 Yoga Ed. エデュケーター / 国際食学士 / マクロビオティックセラピスト / アーユルヴェーダベーシック / アンチエイジングアドバイザー / 健康美肌指導士 / 美肌食マイスター など複数の資格を有すなど、心と身体の真の健康をテーマに活動を行っている。