ヨガ

専門家が解説するピラティスとヨガの違い – 歴史や効果の比較から目的に応じた選び方まで

ヨガと人気を二分するピラティス。どちらをやろうか悩んでいる人も多いのでは?そこでヨガとピラティスの違いからどちらを選択するべきかプロ目線で評価してもらいました。今回は自身がヨガインストラクターでありピラティスの実践経験も持ちながら、理学療法士(PT)を目指し専門学校に通うYoga & Wellness Yu StudioのFounder 橋口昌弘さんに比較を依頼。専門的な見地から両者を比較していただきました。

最近、知人にヨガを教えていることを伝えると「ピラティス行きたいんだよね。」という感じの答えが返ってくることが多いのです。私が教えているのは「ヨガなのだけどな。」と思いながらも「なぜ、ピラティスなのか?」と聞いてみると明確な返答はありません。

ピラティスの華やかな、色っぽい言葉の響きが影響しているのだろうか?モデルさんや芸能人がピラティスをしているイメージを自分と重ねているのかもしれませんね。

私は全米ヨガアライアンスRYT200を取得したヨガインストラクターであり、ヨガの歴史的背景や哲学、アーサナの技術は分かっているつもりです。

また、ピラティスも実際に体験し、教えている人もよく知っていたりします。そして現在、理学療法士(Physical Therapist)の資格取得を目指し専門学校にも通っています。

つまり、一般の人よりも身体の運動機能について専門知識を学び、自ら実践しています。そんな私が、ピラティスとヨガの違いについて本気で調べてみようと考えました。

最近、ピラティスは人気があるのを肌で感じていますし、冒頭の知人の質問にも自分なりに納得して人に答えられるようにしたいと思います。

ピラティスとヨガの歴史から見る違い

UnsplashClarisse Meyerが撮影した写真

本当の違いを考えるのであれば、やはりピラティスとヨガの歴史的背景の違いは理解しておかなければなりません。

ピラティスの歴史について学ぶべく、広く調査するとともに、正確な事実と知識を得るために『コントロロジー―ピラティス・メソッドの原点 』– 2009/12/1 Joseph Hubertus Pilates (原著), 川名 昌代 (翻訳)を読んでみました。

著者のジョセフ・ピラティス氏(Joseph H. Pilates)は、ピラティスを考案した人そのものですし、ピラティスのインストラクターにとって原点とも言われる書籍です。複数の情報をもとにした要約の紹介にはなりますが、ピラティスが考案されるまでの歴史を振り返っていきましょう。

ピラティスの歴史

ピラティスを考案するまでの生い立ち

Joseph H. Pilates氏は、1880年にドイツのデュッセルドルフ近郊で生まれたドイツ人です。彼の父はギリシャ生まれの金属労働者で体操選手。ドイツ生まれの母親は自然療法医であり、人工薬物を使わずに体を刺激して自然治癒させるということを行っていたそうです。

“彼の母親の治癒哲学と父親の身体的功績が、後のピラティスの運動療法の考え方に大きな影響を与えたことは間違いありません”

と記されている通り、彼の両親の影響があったからこそピラティスが考案されたのでしょう。

Pilates氏は病弱な子供だったようで、体力向上のために父のススメで体操とボディービルなどをしたそうです。

父の影響か「生きているギリシャの彫像」。つまり、古代ギリシャ彫刻のような均整の取れた身体作りに夢中になっていたようですが、当時の人々の身体は彼の理想とはかけ離れて健康不良が多く、この原因は現代的なライフスタイル、悪い姿勢、非効率な呼吸であるとの考えに至ったそうです。

これらの問題に対する彼の答えは、筋肉の不均衡やゆがみの修正、姿勢、協調、バランス、強さ、柔軟性を改善し、呼吸能力と臓器機能の向上に役立つ一連の身体運動方法を開発し実践すること。

そして、これらのエクササイズを効果的に行えるよう、当時簡単に入手可能であったバネを用いた様々なエクササイズマシンを発明しました。要は、一種の抵抗運動を提供するマシーンであり、これがピラティスマシーンの原型です。

ピラティスとヨガとの接点

前述の通りPilates氏は、もともと体操選手であり、ボディービルダーとして生計を立てていました。しかし第一次世界大戦前のドイツは混乱していたこともあり、彼は弟とともに仕事を求めて1912 年にイギリスに移住。

対戦国ドイツ出身のPilates氏は、英国当局によりランカスター城に抑留されてしまいました。しかし、抑留中も身体への関心は衰えず、仲間の収容者にフィットネスとエクササイズのトレーニングを行ったと言います。

さらに彼は自らヨガを学び、動物の動きを学んだと言います。後に、特に野良猫の直感的な動きが彼のフィットネスの多くの側面に影響を与えたと語っています。※1

”彼らの仕草がどのように弾力性を保ち、目の輝きを保っているのかに気づいた”

ここでの体験が、Pilates氏とヨガの接点となり、ヨガからの学びをもとに「コントロロジー」といわれる最低限の環境でも実行可能なマットエクササイズを考案したのです。

「コントロロジー」とは、体のバランスを保ち、背骨をサポートするコア姿勢筋に注意を向け、筋肉を制御すること。特に、ピラティスのエクササイズでは、呼吸と背骨の整列の意識を教え、胴体の深部と腹部の筋肉を強化するものでした。※2


参考:

※1 The Acrobatic Immigrant Who Invented Pilates in a Prisoner of War Camp(narratively)

※2 Top 41 Benefits of Pilates: Why It Is Good For Your Health(Flavours Holidays)


バレエ界を中心にニューヨークで台頭

そして1926年頃、Pilates氏はアメリカに移住し、ニューヨーク市にスタジオを設立しました。1960 年代までは直接生徒たちに教えたそうです。

ピラティスは当初、ニューヨークの地元ダンサーなど主にパフォーマー達に熱心に支持されたと言います。すると多くのバレリーナが 8番街のピラティスジムに通っていることが知られるようになると、社交界の女性たちがそれに続いたそうです。

そこから戦後を経て世界にピラティスが普及し、今に至るようです。

歴史から紐解くピラティスの目的

ピラティスの歴史をみると、ピラティスは様々なエクササイズ機器を活用しながら体幹を強化し、目的とする競技の質を向上させたり、その競技で疲労した身体のリハビリテーションをしたりするためのものと言えるでしょう。

個人的に興味深かったのが、Pilates氏が抑留中に野良猫の観察で動物の動きを観察したところ。ヨガのダウンドック(アドームカシュワーアーサナ)に近い響きを感じました。

自然な動物の動きには違和感がなく、現代のコンクリートに囲まれた人工的な環境で育っている私たちの世界とは違い、原始的な動物としての人間というものをPilates氏は見つめていたのかもしれません。

ヨガの歴史

ヨガの始まりは紀元前にまで遡る

ヨガの発祥は、古代インドまで遡ります。今から約4500年前(紀元前2500年)頃、インド地方に生まれた古代インダス文明にあると言われています。

紀元前1500年頃になると、北からインドにアーリア人が南下し、ヨガを発展させました。アーリア人はバラモン教を信仰しており、紀元前1000年頃、ヴェーダ聖典(宗教的書物)を編纂。その中にヨガに通じる哲学や考え方の記載があったと言われています。

ヨガの経典と呼ばれるヨーガ・スートラが編纂

その後、時は流れ2〜4世紀頃、インドの哲学者パタンジャリによってヨーガ・スートラが編纂されました。ヨーガ・スートラは、ヨガを体系的にまとめたもので、ヨガの根本経典として最も古い古典文献となりました。


より詳しいヨガの歴史はこちらの記事をご覧ください。


ヨガの究極の目的は「心の作用の止滅」

ヨガは、ヨガの根本経典であるヨーガスートラ、バガバットギータの2大根本経典に基づいた哲学がベースにあります。

バガバットギータとは、ヒンドゥーの叙事詩『マハーバーラタ』第6巻にその一部として収められており、単純にギータと省略されることもあります。ギーターとはサンスクリットで「詩」を意味し「神の詩」と訳すことができます。

ヨガは、「YOGA」であり「瑜伽(ヨガ)」であり、それはつまり「結びつき」の意味です。目の前に現れるあらゆる物事、事象と自分との結びつきを持ち、繋がりのある世界を広げる。

“YOGA CHITTA VRITTI NIRODHAH.(ヨガとは心の作用の止滅である=心を完全に制御できること)”

これが究極のヨガの目的なのです。

ヨガのアーサナ(ポーズ)は身体と心を結びつける手段

よってヨガは単なるエクササイズではなく、繋がりを得るための手段であり、その根本は心の止滅を目的としている点で、体幹を強化するピラティスとは人間の身体を見つめる角度が違うと言えるでしょう。

またヨガは哲学や様々な呼吸法をもとに、心と体を統合し、それにより執着のない穏やかな世界を実現するための一つの手段としてアーサナを行うと考えます。

アーサナで身体と心を調和させ、心と体を整える作業と言えるのではないでしょうか。

ヨガは、筋トレ・ストレッチ・瞑想・哲学の複合体

私の経験で言えば、ヨガは赤筋トレーニング=等尺性収縮運動的な筋トレ要素があり、ストレッチでもあります。そして瞑想もあり、背景に哲学があり、その複合体であるととらえています。

心身を整える・鍛えるのであれば他にも方法はありますが、複合的に心も含めて整えたいのであればヨガをオススメします。

私自身もヨガを通じて執着が減り、感情をコントロールすることができるようになり、日常生活で非常に重宝しています。

様々な角度から検証するピラティスとヨガの違い

UnsplashMarkus Winklerが撮影した写真

ここからはいくつかの角度から実際のピラティスとヨガの違いに着目して検証します。

呼吸法に見る違い

ピラティスはラテラル呼吸と呼ばれる鼻から吸って口から息を吐く胸式呼吸で行います。

ラテラル呼吸は交感神経を活発にし、体に酸素を十分に取り込みます。ララテル呼吸により、胸まわりの肋骨の拡がりと収縮を意識しピラティスのワークを中心に行います。

息を口からしっかり吐くと、肋間筋が収縮し、腹筋をはじめとする体幹を整えるコアワークの効果を上げます。吐く程度が不完全だとお腹が抜けた感があり、ピラティス効果が感じにくいかもしれません。

それに対しヨガの呼吸は、鼻から吸って鼻から吐く胸式・腹式呼吸を組み合わせた完全呼吸法(ダーガプラーナヤーマ)を行うのが一般的です。ウジャイ呼吸と呼ばれる、吸う息・吐く息を均等にバランスよく酸素を取り込む呼吸法も原則は同じです。


もっと詳しく:喉奥を鳴らして呼吸する? ウジャイ呼吸法でエネルギーを満たそう


腹式呼吸はリラックス時に活発になる副交感神経を優位にします。その為、ヨガは自律神経を整え、心身の不調やストレス軽減に効果があると言われています。

ヨガは深い呼吸を第一に、呼吸に繋げるようにヨガのポーズを行います。ヨガ(Yoga)の語源はサンスクリット語の「ユジュ」で、「くびき(馬と馬車をつなぐ道具)」という意味です。

ここから派生してヨーガは「結ぶ・つながり」の意味を持ち、心と体をつなげる意味があります。ストレスの多い現代社会でヨガをする方が増えているのも納得できます。

一見、似ているピラティスとヨガですが、呼吸法やその期待される効果に違いがありますので、ご自身の目的やライフスタイルに合わせて行ってみると良いでしょう。

普段、私たちは無意識に呼吸をしているため呼吸筋に意識を向けにくいですが、ヨガはその呼吸筋にわざわざ意識を向けることで、体に取り込む酸素の量を増やし、体全体、特に脳に酸素を行き渡らせます。

カパーラ・バーディ(頭蓋骨を輝かせる)という呼吸法は、交感神経を活発にして酸素量を高める呼吸法です。

身体的活用法に見る違い

ピラティスは、重点的に腹筋周辺のインナーマッスルを鍛えて体幹を強化し、脊柱や骨盤の位置を正しく整えて姿勢の改善を行います。その結果、骨格の歪みや筋力不足を効果的に解消することができるエクササイズです。

つまり、これらは筋トレ、ストレッチであり、リハビリであり、最も特徴的なのは自重を使うだけでなく、考案された機器を活用することで、効果的に上記の目的を達成するところにあると見受けられます。

また、ヨガと同様に、『コントロロジー』ではピラティスでも体と心のバランスについて論じられていますし、体と心を自分の意志でコントロールする能力を同時に発生させることが最優先すべき自然の法則であると述べられています。

私は「ん?これってヨガと同じではないか?」と感じました。

出発点が、体(体幹などの強化)なのか、心との協調作業なのかの違いであり、手段としてのピラティスとヨガは共通点が多く、ほぼ近いと考えて良いでしょう。

ピラティスとヨガで使用する器具や装置の違い

UnsplashAsh Hayesが撮影した写真

ピラティスマシーン

ピラティスがヨガと大きく異なるのは、ピラティスマシーンを使用することです。ヨガは基本的に機器は使用しません。

ピラティスのリフォーマーは、ヨガには存在しないので比較しようがありませんが、私が勉強している理学療法で使用する機械療法のリハビリテーション器具と類似しています。前述の通り、もしかしたらピラティスマシーンが先駆けだったのかもしれません。

実際、使ってみると筋量が比較的弱い人向けに作られている様子が伺えます。私の様に長年、筋力トレーニングやランニング、ヨガを続けている者からすると、少し強度が足りない印象です。

筋力強化を現在の環境で最大化するのであればフィットネスマシーンを使うほうが効果的で、逆にこれから筋力強化を考えている人や加齢による筋力低下を補うという意味でピラティスを始めてみるのは、安全で理にかなっていると思います。

マットエクササイズの差

ヨガはヨガマットを利用することは言うに及ばずですが、ピラティスもマシーンエクササイズだけでなくマットエクササイズがあります。ピラティスも同様にヨガマットを利用します。

ヨガのアーサナでもピラティスのマットエクササイズにしても、姿勢保持時間と関節可動域のコントロールで、強度はいかほどでも変えることができます。

例えば、ターダアーサナ(山のポーズ=ほぼ見た目は、静止立位と呼んでも過言ではないが、実際は違う。)でさえ、呼吸法と集中の度合いで汗がにじみ出てくるほど、一定の強度を伴った姿勢維持運動であると言えます。


もっと詳しく:立ってるだけ?実は奥が深いタダーサナ(山のポーズ)の効果とポイント


姿勢維持にも抗重力筋が作動し、立つという一見何も筋量を必要としない動きでさえも一定の負荷を与えることができます。

ピラティスで、この辺りがどのように扱われるかは確認が必要ですが、ヨガではこのターダアーサナは全ての立位の基本として重視されていますし、座位には座位のベースとなる肢位があります。

立位姿勢で使われている抗重力筋の重要度

専門家としての視点から疑問だったのは、ピラティスのマットエクササイズは、何か特徴的な違いがあるのか?という点です。書籍『コントロロジー』を読む限り、差異はほとんど感じません。

確認すると自重筋トレに近いエクササイズが多いのではないでしょうか。ヨガも原則自重トレーニングに近いので、形は違えど目的も方法論も近いと言えます。

インストラクターのリードについて

個人的に気づいたのはインストラクターのリードです。

インストラクターのリードが、ヨガは呼吸を基準に行うのに対して、ピラティスはエクササイズで数を数えるタイプのリードが多かったのが目につきました。

想定できる理由として、体幹トレーニングの要素がヨガよりも濃いということを表していると思われます。ヨガでも数を数えたりすることもありますが、数はそれぞれ人によりペースが違いますし、呼吸の深さも異なります。

人と比較をしないことを原則とするヨガでは、何かのペースに合わせるというより、自分自身でコントロールします。(もちろん、ヨガ初心者を指導する場合には、そのあたりがわからないので便宜的に数を数えたりはします。)

ピラティスとヨガの効果の違い

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ピラティスの効果

ピラティスのエクササイズプログラムは、何度も触れていますが、体幹を主に鍛えていく体幹トレーニングと言っても良いでしょう。そして、その目的は心身の健康、体幹強化による姿勢矯正、より美しい、しなやかな体を作ることです。

当初バレエ業界で採用され、バレリーナのクールダウンやリハビリテーションに活用されてきたように、特定の競技をサポートしたり強化したりするところからも、その効果が伺えます。

ヨガの効果

一方、ヨガも同じような効果が得られます。なぜならば前述した通り、目的は違いますが、ピラティスはヨガの要素を取り入れていますし、実際、いくつかのポーズは類似するものが多いです。

ヨガで体幹が鍛えられていなければ、たとえ優しいアーサナでも姿勢をキープするのは難しく、一定以上の体幹強化は必須となります。

ヨガのアーサナは、緻密でよく考えられた複合運動を行います。一つの個所だけを強化したり弛緩したりするものもありますが、代表的なトリコーナアーサナやビーラバトラアーサナⅠ / Ⅱなどは、代表的な複合的運動と言えます。

ピラティスとヨガの最大の違いとは?

それに加えてヨガは、最終的に「心の作用の止滅」を目的としているので、そのための呼吸法や心の乱れを押さえるための瞑想法など、仏教の修行に近い方法をとります。

仏教でいう三業(身・口・意:身体的な行いと、言葉で表す行いと、心に思う行いを一致させること)であり、密教でいう三蜜(手に諸尊の印契を結び、口に真言を読誦し、瞑想により心に曼荼羅の諸尊を観想すること)のような手法により自身の内側に働きかけ、心の作用の止滅を目指すことになります。

よって、この部分がピラティスとヨガの最大の違いのように思えます。

ヨガではアーサナがうまくできることがゴールにはなりません。いつもイライラしていている人が、難しいポーズをとれたとしても心と体は一体化しないし、実際イライラしている時点で気持ちよくないわけで、これは正しいヨガ(目の前の世界との結びつき)とは言えません。

簡単に言うと、イライラしないで楽な気持ちで日々送ることができるという一見何の変哲もないですが、意外と多くの人が獲得できていない日々に目を向けて、そこに向けた解決のアプローチがアーサナになります。

もしかすると、小さな幸せに気付けるようになることがヨガなのかもしれません。その手段の一つとなるのがアーサナです。

ピラティスとヨガ、目的に応じた選び方

さて、ここまでの内容を鑑みて目的に応じてピラティスとヨガ、どちらが向いてるのか考えてみます。ご自身がどちらが向いてるのかご参考いただければと思います。

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ダイエットにオススメなのはどちらか?

ダイエットを考えるならば、ピラティスとヨガ、どちらが向いてるのか?

答えはピラティスもヨガもどちらも間接的に効果はありますが、直接的に効果があるとは言えません。

ダイエットは、口から摂取した食物の代謝と排泄のバランスによって行われます。食事をとって代謝(分解されてエネルギーとなる)させるか、排出するか、「摂取<代謝・排泄」の状態の成立でダイエット(減量)となります。もちろん人によって体質もありますが、原則はこの関係です。

ピラティスもヨガも継続的な有酸素運動ではなく、ゆっくりと酸素を取り込みながら体を動かしていき、特に赤筋群(TypeⅠ線維)を強化するエクササイズです。

逆に筋トレでは、大きな筋肉(TypeⅡb線維)を爆発的に動かしてエネルギー消費を行い、最初に糖を消費してしまい、その後生じる蛋白質や脂肪の燃焼まで進むと、体内の脂肪が燃えてきます。

ダイエットを主目的に挙げるならば、ピラティスとヨガは有酸素ではあるものの、一定以上の強度で筋肉を強化するランニングと筋トレの方が圧倒的に効果は高いでしょう。

私も30代にトータルワークアウトで2年間、その後パーソナルトレーナーに10年ほどついてもらい筋力強化をしてきました。体重は15kg減のダイエットには成功しましたが、何が一番効いたかと問われたら食事でした。

高脂質、高糖質な食事は取らず、野菜や蛋白質を中心に炭水化物の摂取量とタイミングをコントロールしたことで各段に太りにくい体質になりました。

週に2、3回ほどの筋トレと週に1回のランニング(心拍強化、下半身筋量の維持)を続けました。筋トレで接種した食料の消化、代謝の効率を上げて(エンジンの強化)と摂取量の調整(ガソリンを入れ過ぎない)することでダイエットが可能です。

ある程度のダイエットを一度済ませて、その後「痩せ体質=太りにくい体質つくり」を考えるならば、ピラティスもヨガも効果があると言えます。

筋トレは弱点として、筋を酷使しますので体は硬くなりやすいです。硬くなった筋とのバランスをとるという意味ではヨガもピラティスも相性は抜群です。

筋トレにオススメなのはどっち?

ピラティスとヨガ、筋トレに向いてるのはどちらかと言えば、ピラティスをオススメします。

しかし、これまで述べてきた通り、ダイエットになるまでの強度は筋トレよりも弱いことは変わりありません。ヨガとピラティスに選択肢を絞り、そのどちらかを選べばピラティスということです。また自重筋トレという意味でもヨガよりもピラティスをオススメします。

ただし、同じような効果をヨガで得られないかというとそうではありません。ヨガにおいても、強度 × 時間を調整すれば十分な筋トレになります。ビーラバトラアーサナⅡを5分間続けるとすれば、大腿四頭筋と腓腹筋、ヒラメ筋は悲鳴を上げます。

ボディメークのために筋力をアップしたいのであれば、最も効果が高いのはマシーンでの筋トレです。しかし筋トレは疲労が蓄積され、筋肉痛も生じるので負担はある程度覚悟しなければなりません。その痛みとの葛藤が生じる副作用はあるので、フォームを間違ってトレーニングするとケガに繋がり、後を引くときもあります。

それと比べるとピラティスやヨガのマットトレーニングは、自重運動でケガが少ないと言えます。また、ピラティスのマシーンエクササイズは、インストラクター指導の下で行えば、適切な負荷で可動域もコントロールするので筋トレには適していると言えるでしょう。

また、何かのスポーツや競技に集中的に取り組んでいるような方は、定常的に筋トレを行っているでしょう。そのような場合にトレーニング後のクールダウンやコンディショニングとしてピラティスやヨガを活用すると効果があると言えます。

いずれを選択しても全くケガをしないわけではないので何事もやり過ぎにはご注意ください。

ストレッチにオススメなのはどちらか?

ストレッチに向いてるのは、ピラティスもヨガ、双方お勧めします。

ピラティスもヨガも動きそのものが主動筋と拮抗筋をバランスよく動かすエクササイズですし、ストレッチ効果の高いポーズ、アーサナは多くあります。

しかし、体幹強化を目的とする本来のピラティスの主旨からするならば、ヨガの方が変化を感じやすいかもしれません。ヨガの場合、まさにストレッチを目的としたクールダウン系のアーサナもあるので、ストレッチ効果そのものを目的としていますので。

まとめ – 私の結論

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ピラティスとヨガ、ここまで様々な観点で比較してきた私の結論ですが、ピラティスとヨガの違いは哲学や精神性を除くと、アプローチの違いこそあれ、手段として共通点が多く、得られる効果は非常に近いということです。

どちらを選択するかは、その方のライフスタイルや近所に通えるスタジオの有無、ご自身の現在の体の状態を見ながら判断すればいいでしょう。

両方とも運動不足を補うことはできますし、生活習慣病の予防にも効果があります。ダイエットであれば、まずは健康診断をした上で問題点を把握し、求めるダイエットの目標を定める。そして、そこにストレッチの要素、心の安定や自律神経のバランスの要素などを考えながら、ヨガ、ピラティスを織り交ぜていくのがベストではないでしょうか。

しかし、同じヨガでもホットヨガで得られる効果は違うと思います。私もホットヨガ(ホットヨガ歴8年)でサウナのような爽快感は感じますが、暑過ぎて呼吸が浅くなりがちでした。

何より短時間に脱水するので自律神経のバランスを崩しやすく、1時間のレッスン後は半分身体が使い物にならないという経験をしました。これは年齢の問題も個人差もあると思いますが一般的に指摘される点です。

ピラティスとヨガは、身体機能の強化・維持、柔軟性強化、身体可動域の確保、体幹強化、自律神経を整えるなど、なかなか数値では見えにくいですが、実感しやすい一連の効果を感じるエクササイズといえると私は結論付けています。

なによりマット一つ自重で家でできる気軽さがありがたいですよね!


参考:コントロロジー―ピラティス・メソッドの原点 』– 2009/12/1 Joseph Hubertus Pilates (原著), 川名 昌代 (翻訳)

橋口 昌弘

仕事のやり過ぎで32歳の時ギックリ腰で3か月松葉杖生活を送ることで健康の重要性を認識しました。そこから友人のススメでTotalWorkOutへ。体質改善、肥満改善で健康管理の重要性を再認識。そこから中柔軟性への課題を感じてホットヨガ教室へ通うようになりました。 8年通う中でもっと本格的にヨガを学びたくなりリラヨガにてRYT200を取得。そしてイーシュヴァラ・プラニダーによりリラヨガにてヨガを教える。 全米ヨガアライアンス RYT200取得後もヨガを続けていけるビジネス環境つくりや地域で気軽にヨガと触れ合える場所の提供を思い、東京品川区武蔵小山にYu Studioを設立。現在は理学療法士(PT)の専門学校に通い医療と健康管理の勉強を続けています。