ポーズ(アーサナ)

身体が硬い初心者はヨガできる?柔軟性を養う5つのヨガポーズ

ヨガ初心者や未経験者が抱く「身体が硬い私にヨガは向いてない」という考え。実はこれ勘違いなのです。そもそも身体の硬い人こそ、ヨガすることで身体が柔らかくなり、健康の土台を獲得できます。今回は、身体が硬くなる原因を解説し、柔軟性を取り戻す初心者に向いたヨガポーズをご紹介します。

「身体が硬い」はヨガをやらない理由ではなく、やる理由

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ヨガの先生が取るアーサナ(ヨガポーズ)は、体が柔らかいのでとても美しく見えます。すると、ヨガを始めようと思っても、あまりに美しいポーズを目の前に、自分は身体が硬いのでヨガは向かないと考える人は多くいます。何を隠そう、私もその一人でした。

しかし、美しいポーズをとっているヨギーニ(ヨガをする女性)でも最初は身体が硬かった方も少なくないはず。聞けばヨガの先生も、ヨガをする過程で徐々に柔軟性を高めてきたと言う方が多いです。

身体が硬いからヨガできないと言った気持ちは間違いで、ヨガをやるから柔軟性を獲得できる。つまり、身体が硬いのはヨガしない理由ではなく、ヨガする理由なのです。

身体の硬さがもたらす様々な身体の不調

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そもそも身体の硬さを放っておくのはよくありません。最近では、長時間のスマホ姿勢や長時間のデスクワーク、肩掛けのバックなど、姿勢を歪める習慣が当たり前となっています。現代ならではの習慣が、身体の硬さや姿勢の悪さを生み、不調の原因となっている場合が多いのです。

以下のような症状や不調を経験したことのある方は要注意です。

1.  肩こりや頭痛

肩こりの原因は、主に背中まわりの筋肉の硬さ。筋肉が緊張し、それが血管を圧迫し、栄養素や酸素をスムーズに運べない事から老廃物が蓄積していきます。

すると体の異常を検知して発せられるヒスタミンやブラジキニンが、こりや疲労、痛み、不調、不快感を感じさせるのです。※1

厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、「気になる自覚症状」において、肩こりは女性第1位、男性第2位となっており、まさに国民病。ほとんどの方が感じている身体の不調です。


もっと詳しく:

肩こりの根本原因から紐解く肩こり解消・改善のためのヨガポーズ

ヨガで肩こりをスッキリ解消 – みるみる肩が軽くなる5つのポーズ


2. 腰痛

腰痛の原因は様々にもかかわらず、原因がわかっているものは実に15%しかないと言われています。

原因不明である残りの85%は、ストレス等の心理的影響や普段から同じ姿勢を保った状態が長時間維持されることで、運動の不足、肥満等の身体的影響、そして身体の硬さからくる神経の障害が関係していると言われています。

腰痛も肩こりと同じく、「気になる自覚症状」において男性第1位、女性第2位と、国民病と言えるのです。


もっと詳しく:ヨガで腰痛知らずの体に – 腰痛に効果的な5つのポーズ


3. 猫背等の姿勢不良

背骨は大まかに首の周辺である頸椎、胸の周りの胸椎、そして腰周りの腰椎に分かれ、S字カーブを描いています。人間が直立時でも転ばずバランスを保てているのは、このS字カーブの構造のおかげです。

しかし、姿勢不良による背骨や骨盤の歪みが、筋力と柔軟性の低下を産むことで、体が猫背のまま常態化してしまうと考えられています。


もっと詳しく:猫背改善に効く6つのヨガポーズ – 姿勢を正せば6歳若返る


4. 自律神経の乱れによる様々な疾患

身体の硬さを放っておくと、次第に自律神経の神経伝達も阻害し始めます。

自律神経は脊柱を通り身体全体に張り巡らされており、全身の内臓や血管を制御しています。そのため、背中周りの筋肉の緊張や歪みが自律神経の乱れの原因となり、様々な内臓疾患や精神疾患を引き起こすと言われています。

自律神経と身体の柔軟性は切っても切れない縁で繋がっているのです。


もっと詳しく:自律神経の乱れをリセット – 8つのヨガ呼吸法とポーズでセルフケア


ヨガで体の不調とさようなら

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筋力と関節の柔軟性が低下すれば、肩こりや腰痛となり、それが姿勢不良を生み、次第に自律神経が乱れる。身体の硬さはこのような悪循環の元凶であり、生活習慣病の予防においても姿勢と身体の柔軟性はとても重要なのです。

ヨガマット一枚と一畳分のスペースさえあれば手軽に出来るヨガは、柔軟性を取り戻す最適な方法の一つ。また、身体が硬い人は、柔軟性を向上する過程で身体の変化を感じやすく、ヨガの効果を実感しやすいメリットもあります。

だから身体の硬い人こそ、ヨガを始めたほうが良いのです。

身体が硬い人はここから始めよう

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では、身体の硬いヨガ初心者はどうアプローチしていくべきか?

ポイントは、柔軟性を養うと共に、若干で良いので筋肉も鍛えることです。筋トレと言うと引いてしまう方もいるかもしれませんが、ヨガを続ければ適度な筋力アップにつながります。

上半身は、肩甲骨を中心とした背中全体の筋肉の硬さを取り除き、鍛える。そして背骨を構成する頸椎、胸椎、腰椎全体の柔軟性を取り戻すこと。

下半身は、問題なく前屈ができることを目標として、股関節周りの筋肉を鍛えると同時に可動域を取り戻すこと。またお尻の筋肉である大臀筋、太腿の裏側にあるハムストリング、そしてお腹周りを覆う腹筋群を適度に強化していくことです。

身体が硬いヨガ初心者が注意すべきこと

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また、ヨガに興味はあっても「身体が硬いとキツそう。」と躊躇する人もいると思いますが、この考えは間違いです。そもそも、ヨガは、心地よいと感じる程度に止め、呼吸を整えながら徐々に柔軟性を取り戻すものでご安心を。

ただ、ヨガを始める前に、初心者の方が注意すべき点がいくつかありますので、事前に確認しておきましょう。

1. 呼吸を止めない

初心者のみなさんは、硬い身体を無理に伸ばそうとして、呼吸を止めがちです。しかし、ヨガはアーサナ(ポーズ)と呼吸を調和して行うもので止めてはいけません。

ゆっくりと呼吸を続ければ副交感神経が刺激されリラックスします。呼吸を繰り返すことで心が落ち着き、特に吐く息を意識することで徐々に身体も伸びていきます。

ヨガには特有の呼吸法がありますのでポーズだけでなく呼吸を大切にポーズをとっていきましょう。

2. 難易度の高いヨガポーズは取らず、決して無理しない

そもそも無理のあるポーズは怪我の元ですから、取らないようにしましょう。ポーズは複数のアライメントが複合しているものほど難易度が高いです。こうした複雑で難しいポーズは、初心者のうちは避けておきましょう。

難易度が低いポーズでも、キツイと感じたらすぐに緩め、心地よさを感じる場所を探してください。

また、ヨガブロックという補助具を利用するのもオススメです。ヨガブロックを使うと通常よりも浅い角度でポーズをとることができます。徐々に、角度を深くしていくことで無理なく安定したポーズを取ることができ、ヨガポーズの練習にもなります。

無理なく、安全に、心地よく伸ばせるポイントを探してみてください。

3. その日の変化に意識を目を向け、進歩を感じる

大切なのは、ポーズを取りながら前回からの変化や今日の調子に意識を向けることです。

ポーズを安定的に取れる角度を探し、呼吸を安定させます。次に呼吸をさらに深め、今この瞬間の自分の身体の調子を探ります。

前回キツかった角度も今回はもう少し深く伸ばせるようなったり、または今日は少しキツく感じるなど同じポーズでも前回とった時と何か違いはないか?変化と向き合ってみましょう。


もっと詳しく:ヨガの効果を高めるために初心者が注意すべき6つのポイント


柔軟性を取り戻すヨガ初心者向けポーズ

さあ、それではヨガを始めましょう。
硬くなった関節と筋肉を柔軟にする5つのポーズをご紹介します。いずれも難易度は低めですが、初心者にとっては意外と簡単ではないポーズです。

キツイと感じた場合は、必要に応じて緩めることを忘れずに。また、可能であれば、ヨガクラスに参加し、スタジオのインストラクターにしっかりと指導してもらってから、一人で実践することをおすすめします。

1. 合せきのポーズ

合せきのポーズ(バッダコーナーサナ)は、骨盤、腹部、背中が刺激され、血行がよくなると言われています。股関節を開脚し、背骨を真っ直ぐに伸ばします。瞑想に適したポーズですが、初心者の方がこの姿勢を維持するには意外と筋力を使う、侮ってはいけないポーズです。

  1. 両足を曲げて足を手前に近づける。
  2. 足の裏を合わせ、足を陰部に引き寄せる。両足の小指側は床に付け、両かかと後部は陰部に付ける。
  3. 両膝を開き、床に付ける。
  4. 両手を組み、両手で両足を掴む。肋骨を四方に開きながら、背骨をまっすぐに伸ばし、まっすぐ前方か鼻の先を見る。

ヨガポーズガイド:合せきのポーズ


2.  猫のポーズ / キャット&カウ

猫のポーズ(虎のポーズ)の姿勢から背中の伸びを交互に行う基本のポーズです。頸椎、胸椎、腰椎の脊柱全体を柔らかくし、背中全体をストレッチしていきます。呼吸を動きと同期させることを忘れずに。

  1. 肩の真下に手首、腰の真下に膝がくるように四つ這いになる。足の甲は寝かせる。
  2. 息を吐きながら尾骨を下に向けて背中を丸め、目線をおへそに向ける。
  3. 息を吸いながら背中をしならせ、胸を開いて顔を正面へ。

ヨガポーズガイド:猫のポーズ / キャット&カウ


3. 下向きの顔の犬のポーズ

下半身から上半身まで身体全体を強化するポーズです。下半身は骨盤から下のハムストリングスからふくらはぎ、アキレス腱、かかとまで全体を深くストレッチし、上半身は肩甲骨周辺のコリを和らげるのに効果があります。

  1. 息を吐きながら床から上体を上げていく。手を伸ばし、頭を足の方向に引きつけ、頭頂部を床につける。
  2. 肘と背中は伸ばしきったまま。膝の裏をのばしたままに保ち、かかと、足の裏は床から離さない。
  3. 両足先は前方に向け、平行を保つ。深呼吸を繰り返す。
  4. 息を吐きながら頭を床から持ち上げ、上体を前方に伸ばすようにしてゆっくりと床に身体を下ろし、休む。

ポーズの詳細:下向きの顔の犬のポーズ


4. 上向きの顔の犬のポーズ

うつ伏せの状態から後屈に入るポーズです。腰を曲げる感覚ではなく、両腕で支えながら腹筋で上半身を持ち上げ、背骨全体で後屈を取るようにイメージしましょう。腕の力だけを使ってしまうと腰椎に負荷がかかり、腰を痛める可能性もありますので十分注意して行ってください。

1. うつ伏せになる。両足を腰幅に開き、足の甲をつけて足全体をまっすぐ伸ばす。両手を横の床におく。手の指先は前方に向けておく。
2. 息を吸いながら頭と上体を持ち上げ、腕をまっすぐ伸ばして頭と上体をできるだけ後ろにそらす。膝、腿は床から離す。膝の裏を伸ばし、両足をまっすぐ伸ばす。両手の手のひらと足先だけで全身を支える。
3. 背骨、腿、ふくらはぎを十分に伸ばし、また、臀部をかたく締める。胸を前方に押し出し、首を十分に伸ばしてから、頭をできるだけ後ろへそらす。このとき、手のひらで床を押すようにして、腕も十分に伸ばしていること。深呼吸を繰り返す。
4. 腕を曲げて身体を楽にし、床の上で休む。


ヨガポーズガイド:上向きの顔の犬のポーズ


5. 半分の立位前屈

最後のポーズは立位から半分の前屈をするポーズです。

背中全体を強化しながら無理なく前屈も行えるポーズです。初心者のうちは、ハムストリングスがきつく感じるかもしれませんが、その際は膝を少し曲げて調整しましょう。徐々にハムストリングを伸ばせるようになるのが目標です。

腹筋に力を入れ、腰を曲げることなく背筋を伸ばし、股関節から前屈することを心がけてみてください。

  1. タダーサナのポーズで立つ。
  2. 息を吐きながら前屈し、手の平を床につける。この状態で手を両足の横へ、さらにかかとの後ろへと順次移動させる。この間できる限り膝を曲げない。
  3. 頭を持ち上げ、背骨を伸ばす。尻をわずかに頭の方へと移動させ、足が床と垂直になるようにする。呼吸を繰り返す。
  4. 息を吐きながら状態を足に近づけ、頭を膝につける。膝を曲げない。内腿を引き上げるようにして膝頭を引き締める。深く呼吸をする。
  5. 深く息を吸いながら手を床から離し、タダーサナに戻る。

ポーズの詳細:半分の立位前屈


身体の柔軟性を取り戻し、健康の基礎を

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ポーズはなるべく初めての方でも取りやすいものを選び、シークエンスとなりやすい順序でポーズを5つ取り上げてみました。

それぞれのポーズを取ることで、上半身と下半身を満遍なくストレッチでき、合わせて筋力も強化できます。たった5つですが、初心者の方にとってヨガの効果を感じやすいポーズてしょう。

また、この5つに慣れた方は、次の記事を参考にしてポーズを増やしてみましょう。ヨガ初心者向けに20の基本のポーズを取り上げています。


もっと詳しく:ヨガ基本ポーズ20 – 初心者でもOK、おうちで効果抜群なポーズ


まずは週1回で構いません。次は週2回を目指すなど徐々にペースを高めていきましょう。時間の経過とともに心地よさを感じるようになれば、自然とヨガが好きになり、たくさんヨガしたいと思うはずです。週一回のレッスンでは物足りず、毎日、自宅でヨガを続けることが日課になれば、数ヶ月で効果が現れるくるでしょう。

身体の硬い人こそ、日常生活にヨガを取り入れ、身体の不調や心の不安、心配を取り除き、健康の土台を獲得していきましょう。これをきっかけに気軽に考え、一歩を踏み出してみてください。


もっと詳しく:ヨガの効果が現れる期間は? – ヨガの習慣化で効果は倍速に


Yu Staff

最初はサーフィンのために始めたヨガですが、ヨガから、ワークアウトや食事、呼吸法、瞑想など、もっぱら人間の脳、身体と心の繋がりへの興味が尽きない。最近はビジネス書よりもこれらをテーマにしたノンフィクションばかり読んでいます。