アーユルヴェーダで食材を選ぶ際に知っておきたいのがラサとグナ。それぞれに性質を持つと考え、私たちの心とも密接に影響しあっています。細かな決まりごとが多いという印象のあるアーユルヴェーダですが、グッと身近にするための本質とTIPSを解説します。
以前、コールドプレスジュースについての記事で、アーユルヴェーダの主な3つのドーシャ(体質)ごとに適した野菜・果物をお伝えしましたが、そこからさらに詳しく、今回から数回に分けて、それぞれのドーシャごとに適した食材と食事法を見ていきます。
本題に入る前に…、アーユルヴェーダにおける食の考え方や性質について理解しておかなければなりません。単にこの食材を摂れば大丈夫、といったものはありません。何を摂るのかを決める上でとても大切な考え方について説明していきます。
アーユルヴェーダでは、味を甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味の6つに分け、これらを「ラサ」と呼んでいます。それぞれの味には体を温めたり冷やしたりするエネルギーの性質があります。ラサとはサンスクリット語で「味」という意味ですが、「感情」という意味でもあり、例えば刺激物をとり過ぎるとイライラするなど、味覚は感情にも影響すると考えられているのです。
例えば、自身のドーシャ(体質)と同じ特性を持つ味覚や食材を多くとってしまうと、ドーシャは乱れてしまいます。そして、ドーシャが乱れたときほど、同質のものを欲する傾向にあります。例えば、ピッタが上がり、イライラしているときほど、辛いものが食べたくなるなどです。このとき辛いものを食べると、ますますドーシャのバランスが乱れて、体調を崩してしまうのです。
それでは、6つのラサの特徴と食品をみてみましょう。以下に記載されている「熱」エネルギーをもつ食べ物はより消化されやすく、「冷」エネルギーをもつ食べ物は消化を鈍らせ、遅らせますので、覚えておくと良いです。
カパ(カファ)体質と同じ地と水の要素からなるため、カパの性質を増やし、ピッタとヴァータの性質を減らします。
ただし、はちみちも甘味なのでカパを増やしますが、非加熱のはちみつはカパの性質を抑えるといわれています。
カパ体質とピッタ体質に含まれる地と火の要素からなるため、ピッタとカパの性質を増やし、ヴァータ(ワータ)の性質を減らします。
カパ体質とピッタ体質に含まれる水と火の要素からなるため、カパとピッタの性質を増やし、ヴァータの性質を減らします。
ピッタ体質とヴァータ体質に含まれる火と風の要素からなるため、ピッタとヴァータの性質を増やし、カパの性質を減らします。
ヴァータ体質と同じ風と空の要素からなるため、ヴァータの性質を増やし、ピッタとカパの性質を減らします。
風と地の要素からなるため、ヴァータの性質を増やし、ピッタとカパの性質を減らします。
また、食べものには、体の状態と深い関係のある「グナ」と呼ばれる性質があります。その背景には「心」の性質が関係しています。グナはもともと、主に心の性質で使われる用語で、アーユルヴェーダでは心に、
の3つの性質があると考えられています。
タマスに満ちた心は「無知、無気力、怠惰」となり、体には同性質のカパを増やし、ラジャスが増えると心には「過剰な活動、怒り、攻撃、イライラ」が増して、体には同性質のピッタが増えてしまい、いずれも健康を害するもととなります。
しかし、サットヴァという純粋性の性質を持った心は、私たち一人ひとりがみな持っている、体の3つの性質=ドーシャ(ヴァータ・ピッタ・カパ)のバランスを整え、平和に、知性や愛情を持って生きるもととなる性質です。
このように、3つの心の性質と食事には深い関係があることから、食べものにもグナがあると考えられているのです。
例えば、サットヴァに富む食べものは、柔らかく消化によい食べもの、6つの味のバランスがとれていること、適量であること、多くの新鮮な野菜や果物、適切に調理された作りたての食べものなどです。サットヴァに富む食材を使った食事を続けると、心が落ち着いて、軽くなり、明晰になります。心が軽くクリアになれば、体も軽くなります。これはなんとなく経験されたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その他、サットヴァに富む食べものは、炊き立てのご飯など調理したての穀物や多くの豆類、新鮮な牛乳、母乳、ギーやバター(適量)、多くのナッツ類、種類、ゴマ、はちみつ、多くのハーブ類、新鮮な水、新鮮なフルーツジュースなどです。
それぞれの体質の人が、サットヴァに富む心になれば、ヴァータ体質の人は心身ともに落ち着きを取り戻し、ピッタ体質の人は短気やイライラをコントロールできるようになります。また、カパ体質の人は軽さと柔軟性を得ることができるようになるのです。
ところが、レトルト食品など、調理してから時間のたったもの古いものなどは「タマス(惰性・停滞性)」を増やし、「サットヴァ(純粋性)」を減らします。タマス的な食べものは、心を曇らせ、活動や気力を低下させて判断力を鈍らせ、混乱を招きます。
タマス的な食べものは肉や魚、多くのファーストフード、揚げ物、冷凍食品、食品添加物を使った出来合いの食品、作り置きや残り物、たまねぎ、きのこ類、マーガリンなどです。
最近は、子どもにもうつ病などの心の病が増えていると聞きます。もしかしたら、タマス的な近年の食生活に関係しているのかもしれません。
刺激の強いもの、味の濃すぎるものは「ラジャス(動性・激性)」を増やし、これもまた「サットヴァ(純粋性)」を減らします。
ラジャス的な食べ物は、活動力を高め、創造力、攻撃性、激質を刺激します。例えば、新鮮さを欠いたヨーグルト、胡椒、卵、コーヒー、唐辛子、チーズ、精製した砂糖、一部の豆類、アボカド、塩、柑橘類、ピーナッツ、トマト、ケチャップ、市販の豆乳などです。
決め事が多いと思われたかもしれません。しかし、食品すべてにおいて神経質になる必要はなく、過剰に取り組む必要もありません。完璧でなくても大丈夫です。
今回ご紹介したように、まずはサットヴァに富む食事を意識してみてほしいのですが、ラジャスが全て悪いのかというとそうではありません。例えばラジャスの性質を持つ胡椒は消化を促進するためには必要なもの。ラジャスの食品を食べてはいけないということではありません。
参考記事:アーユルヴェーダ – サットヴァを高めて人生をナチュラルに
大切なのは、
できるようになること。
スポーツやフィットネスなどで体を整えるだけではなく、普段の食事からも、心身のバランスをとれるようになることです。