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睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで

睡眠不足は、私たちの生活リズムを崩すことに始まり、マインドや健康にも大きな影響を及ぼします。若い時には夜通し遊ぶのは楽しいひと時でしたが、仕事が人生の大部分を占める20代の後半ともなれば事情は変わってきます。今回は睡眠の不足がもたらす様々な健康リスクについて解説します。

世界的に見ても睡眠時間が少ない日本人

私たち日本人の平均睡眠時間をご存知でしょうか?
2014年、経済協力開発機構(OECD)が世界29カ国の国民平均睡眠時間を発表しました。その結果は、OECD29カ国中、ワースト2位の7時間43分という結果。日本人の睡眠時間は世界と比べて短く、最低レベルなのです。

なお、OECDの調査結果は15~64歳を対象とした平均睡眠時間です。総務省統計局がまとめた「平成23年社会生活基本調査 生活時間に関する結果」では、総数の平均は7時間42分とほぼ同様の結果。その中でも45~49歳(7時間3分)、50~54歳(7時間14分)と一番短いことがわかります。また、多くの年代で男性よりも女性のほうが短く、女性の平均は7時間36分という結果です。

睡眠時間が短いと何が問題なのか?一つは経済的な損失が大きいこと。日本における睡眠障害の経済損失は、生産性低下による損失と、欠勤・遅刻・早退・睡眠不足に関連した交通・産業事故の損失の合計でおよそ3兆5000億円。医療費を含むと約5兆円と計算される調査結果もあります。※1

また、睡眠不足は私たちの健康に直接作用しています。具体的には次にあげる6つの健康リスクを高めます。

睡眠不足がもたらす6つの健康リスク

では、健康面で睡眠がなぜ大切なのか?

普段、睡眠は私たちにとって当たり前すぎる生理現象で、大切さについてあまり考えることもありません。東京などの大都市に住む一部の人にとって、もしかしたら睡眠時間は無駄なものとさえ考える人もいるかもしれません。

しかし、睡眠時間の減少は健康面の代償がとても大きいということはしっかりと把握しておく必要があります。次の睡眠不足がもたらす6つのデメリットは現代社会の文明病とも言える生活習慣病だけでなく、メンタルヘルスの問題と大きく関係していることがわかります。

1. 肥満リスクが高まる

まず、睡眠不足は肥満リスクを高めます。
これらの関係を示す研究結果は枚挙にいとまがありません。大学生に睡眠時間を4時間しか与えずブドウ糖負荷試験を実施したところ、インスリン抵抗性が生じ、糖尿病予備軍のような結果を示し、高密度の炭水化物を欲するなど食事の量が増えたそうです。※2

またコロラド大学の研究によると、睡眠不足が原因としてインスリン反応と関係のある信号伝達経路が乱れたことで、活動量やエネルギー消費量に変化はなくても体重が増えることが確認されたのです。※2

つまり睡眠不足により消費エネルギー効率を引き下げ、さらに炭水化物などの糖類の食欲を増進することになり、肥満リスクが高まるということです。もしあなたがダイエットに取り組みながらも睡眠に十分に気を使っていないとしたら、無駄になっている、またはダイエットを難しくしているとも言えるのです。

2. 肌のハリ、つや、潤いが不足する

睡眠に関わるホルモンはいくつかありますが、最も知られているのは成長ホルモンの分泌かもしれません。昔から寝る子は育つと言われるように、成長ホルモンは就寝直後の深い眠り、ノンレム睡眠の状態に最も多く分泌され、身体の成長や疲労回復を促す役割を担っています。

また、アンチエイジングや美容に興味を持っている女性であれば、表皮、真皮、皮下組織、筋肉によって肌のハリや保湿が保たれていることは知っている方も多くいるでしょう。実は肌細胞の再生は成長ホルモンが促進しており、やはり睡眠が大きく関係しているのです。また、肌の保湿で大切なコラーゲンの合成も成長ホルモンが関係しています。

睡眠不足や就寝直後の寝つきの悪さなどは成長ホルモンの分泌が抑えられてしまい、肌が修復されないばかりか、結果的に老化を促進させてしまっています。様々な美容の手段を試している女性は多くいると思いますが、最も大切なのは睡眠なのです。もし睡眠をおろそかにしているなら今日から改めましょう。

3. 睡眠不足は記憶力が低下する

記憶力や集中力低下についても睡眠は大きく関わっていることがわかっています。睡眠の機能の一つとして記憶の定着があります。睡眠直後に一回目のノンレム睡眠が訪れ、そこでは「嫌な記憶」を消去するとされています。その次にくる浅い眠りであるレム睡眠では記憶の定着が起こるのです。

つまり、睡眠を遮断されれば当日の記憶や知覚の定着が阻害されてしまいます。こうして記憶力の低下が起こるのです。※3

4. 免疫力が下がり病気にかかりやすくなる

米国に睡眠不足もたらす記憶への影響に関する調査結果があります。二つのグループに分け、一方には数時間睡眠を遮断し、このグループと対照群にC型肝炎のワクチンを接種したところ睡眠遮断されたグループは、ワクチンに反応してできる抗体は50%も少なかったそうです。※2

睡眠不足は免疫系に与える影響が驚くほど大きく、免疫機能が下がるということは風邪はもちろんのこと、あらゆる病気にかかりやすいということです。

5. 生活習慣病のリスクが高まる

ストレスが生活習慣病と関係していることはよく知られているところです。睡眠はストレスとも大きく関係しています。ストレスホルモンとして知られる副腎皮質ホルモンの一種、コルチゾールは就寝直後のノンレム睡眠で分泌が抑えられ、脳は完全に休息状態に入ります。

ところがノンレム睡眠が十分でないと、コルチゾール分泌が抑制されず、「嫌な記憶」を忘れることができないのです。「嫌な記憶」は、寝て忘れるとはよく言ったもので、ストレス解消の一役をかっているのです。しかし、眠りが浅いといった質の悪い睡眠では「嫌な記憶」も消えることはありません。

また、睡眠不足が炭水化物を代表とする糖類を欲する状態に陥り、肥満のリスクが高まること、そして免疫力が下がることを解説してきました。ストレスとともに、これらを知れば文明病とも言える糖尿病やその他の生活習慣病が増えることは想像に難しくありません。

6. 様々な精神疾患

私たちは夜になれば眠くなりますが、これはメラトニンと呼ばれるホルモンが分泌されることで副交感神経が優位になって得られるものです。質の高い眠りに就く上でも大切なメラトニンを活性化させる上で大切なのがセロトニンです。

十分な睡眠が取れない状態はメラトニンの分泌が抑制され、私たちの体内時計に狂いが生じ、日中のセロトニンの活性も抑制されてしまいます。セロトニンとメラトニンは自律神経と深く関わっており、自律神経失調症やうつ病、情緒不安定などの精神疾患はセロトニンの不足が関係していることがわかっています。

セロトニンと精神疾患の関係については以下の記事で詳しく取り上げていますので参考にしてみてください。

参考記事:幸せホルモン セロトニンを増やして幸福感を高めよう

睡眠不足解消に必要なのは?

睡眠は私たちの思っているよりもずっと大切で、健康と関係が深いつながりがあることをご理解いただけたでしょうか?

理解したら知るべきは睡眠不足の解消方法です。解消するのは睡眠時間を長くすることですが、そう単純ではないようです。次回、睡眠の質について取り上げて、さらに質の高い睡眠を得るために必要な習慣と方法をご紹介します。

以下の記事で睡眠不足と健康について取り上げています

  1. 睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで
  2. 睡眠の質を高める5つの習慣で心と身体に真の休息を
  3. 幸せホルモン セロトニンを増やして幸福感を高めよう
  4. 人は野生に帰れば幸福と健康を取り戻せる – 食事と健康の11のルール
  5. ストレスはその日のうちに解消を – 効果的な水素入浴法

引用・参考元

Yu Staff

最初はサーフィンのために始めたヨガですが、ヨガから、ワークアウトや食事、呼吸法、瞑想など、もっぱら人間の脳、身体と心の繋がりへの興味が尽きない。最近はビジネス書よりもこれらをテーマにしたノンフィクションばかり読んでいます。