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コンディショニングとヨガ – ヨガを続ければ身体の不調が改善する理由

前回同様、コンディショニング・パーソナルトレーナーの金森さんにお話を伺っています。第2回のテーマは「姿勢」です。立ち姿とパワーポジションの二つの姿勢に注目しながら、重力に逆らわない本来あるべき姿勢を学び、ヨガが継続することで得られるコンディショニングの効果を学びます。

ゲスト
金森徹さん
体と心を動かす空間「Spazio」オーナー
パーソナルトレーナー、コンディショニングトレーナー。スポーツの現場で選手たちへの指導、接骨院、デイサービスでも経験を積み、現在ではスポーツの現場と合わせて様々な目的に合わせたトレーナーとして活動している。健康は人生の目的でなく幸せな生活を送る手段として心と体を動かす空間Spazioを立ち上げ、川崎市の地域のコミュニティづくりに励んでいる。

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聞き手
尾花理恵子さん
Yu Studio Co-Founder, Operational Director
全米ヨガアライアンスRYT-200 ヨガインストラクター・アーユルヴェーダセラピスト ヨガ&ウェルネススタジオYu Co-Founder・Operational Director 自分をいたわるヨガとアーユルヴェーダ、スポーツコンディショングヨガをテーマに活動中。 2021年栃木県佐野市にUターン移住。地元の自然を満喫しながら東京圏へ通勤。心穏やかに生きることを目標にしている。

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連載:コンディショニングとヨガ

第1回 - トレーナーに聞く日常をより良くする選択

ヨガが身体のなんとなくの不調を改善する分野で見直されています。コンディショニングのプロから見たヨガの効果について解説します。

第2回 - ヨガを続ければ身体の不調が改善する理由

二つの姿勢に注目しながら、重力に逆らわない本来あるべき姿勢を学び、ヨガが継続することで得られるコンディショニングの効果を学びます。

良い姿勢がパワーを生み、怪我しにくい身体も作る

UnsplashYannic Läderachが撮影した写真

尾花:今回は姿勢についてお伺いしたいと思います。

ヨガでも「アーサナ(坐法)」といういわゆるポーズが核の一つになっていることは一般的ですが、スポーツの世界でも姿勢がとても大切にされてきたのですよね。

金森:姿勢はとても重要で、日々の現場でも選手たちにしつこく、繰り返し指導しています。なぜなら、良い姿勢が良いパワーを生み出すからです。

良いパワーを生み出すには、体を機能的に使い、パフォーマンスを最大化させることが必要です。同時に、姿勢を意識することで怪我をしにくい体の使い方ができるようになります。

今回は、まずスポーツの指導現場で重視する、体幹、軸、肩甲骨、股関節、足の裏がどう在ることが、より良い状態なのかを解説します。

具体的には(立った)姿勢、パワーポジション(かがんだ姿勢)の2つを解説することで、姿勢と重心の関係についてお話するところから始めましょう。

良い姿勢を取れば、日常が変わる

UnsplashMike Kilcoyneが撮影した写真

金森:まず、なぜ姿勢が重要かと言われると、人が地球上で運動をしているからなのです。なかなか、理解しにくいかもしれませんが、重力が、上(空の方)から下(地上)に向かって働いているからです。

そう考えると、人の体がどのような構造をしているのか?を理解できます。さらに、どのような位置関係にすれば、無駄な力を必要としないバランスのとれた立ち方ができるか、が理解できます。

つまり、これが「日常をより良くする」ことに繋がるのです!

例えば、積み重なった積み木一つ一つは力があるわけではないですが、バランスを取れば下から上に積み上げることができますよね。

だとすれば、動かない骨の枠組みを内臓や筋肉などがある状態で、どう配置すれば無駄な力を入れずに、楽に立つことができるかがわかってきます。

完全に脱力では立つことは出来ないとなると、どこに力を入れて、どこをどの位置にしておけばいいかがわかると思います。良い位置関係にした状態、姿勢を「良い立ち方」と呼んでいます。

尾花:なるほど。日常から良い姿勢が取れて、楽な動作につながるんですね!

金森:では、「立つ」と「パワーポジション」を実践してみましょう。まずは、良い立ち姿です。

毎週土曜日20:00〜21:00開催

ヨガを通じて自分の内面を見つめ、体の使い方や心のあり方を捉え、身体のパフォーマンスを最大限発揮すること、怪我を予防することを目的に行います。様々なスポーツに共通する動き 「立つ」「走る」「止まる」「ねじる」 この4つにフォーカスし、ヨガのポーズや呼吸、瞑想を通じて微細な体の感覚を感じ取り、精神の集中とリラックスで心の動きも見つめます。

もっと詳しく

重力に逆らわない本来あるべき姿勢 – ターダ・アーサナ

金森:ヨガのターダ・アーサナ(山のポーズ)は、お馴染みの姿勢ですよね。早速やってみてください。

尾花:写真左がターダ・アーサナ(山のポーズ)で、良い立ち姿勢です。写真中央と右の姿勢は、普段よくみられる悪い姿勢です。

こうして見比べてみると、悪い姿勢は腰や首の辺りが詰まるような感覚がありますね。

金森:そうですね。悪い姿勢と言われるような反り腰(写真中央)や、お腹が前に出るような姿勢(写真右)と比べながら、まずは良い姿勢(写真左)を確認していきましょう。

位置

頭から足へ向けて観察するように人を横から見てみましょう。頭(耳)、肩(肩峰)、骨盤(立った状態)、膝、くるぶしが直線になっています。

感覚・意識

足の裏から頭、下から上に向けて引き上がっていくイメージです。

以上を確認したら、部位ごとに細かくチェックしてみましょう。

足の裏

全てが均等に乗っている感覚。踵重心(指が少し浮いている)、外側重心(小指に重心が偏り、親指がたまに浮く)、内側重心(親指に重心が偏り、土踏まずが潰れている)のような偏りがないか確かめてみます。

骨盤

骨盤を立てます。具体的にはお尻をしめて、下腹部に力を入れます。
骨盤が前に倒れている反り腰(写真中央)や後ろに倒れ腰が丸まっている状態(写真右)がNG姿勢です。

腹部腰部(腰回り)

軽く力の入ったお腹が薄い状態

胸椎

胸を張り、両腕は体にぶら下がっている感覚

胸の上、両肩の間に耳がくるようにする。

尾花:全ての基本ポーズであるターダ・アーサナですが、日常の全ての基本姿勢でもあるのですね!

足の裏から頭頂まで整えていくと呼吸が楽にでき、関節の詰まりのない楽なポジションになると思います。関節の負担が少ない分、筋力をしっかり使える感覚を感じることができます!

パワーポジションを正しく行えれば動作が楽になる

金森:次にパワーポジションです。

パワーポジションというのは、人が様々な方向へ移動しやすい姿勢のことで、「動作を行うための準備姿勢」のことです。うまく立つことで自分の体の重心を感じ、コントロールできるようになることが、スポーツにおいても日常においても大切です。

普段の生活で、段差などにつまづきやすい方や電車で立つのが苦手な方は、ぜひ意識してもらえるといいかなと思います。

話を元に戻すと、重心がコントロールできれば、体を自分の意志で移動させる事ができます。重力は地上に対して垂直にかかっているので、重心をどこかに移動させれば、人は移動します。これが運動です。

この運動の初歩的でシンプルで、かつ重要なのが、かがんだ状態から立ち上がるという上下の動き(スクワット動作)で、そのスタートになる姿勢がパワーポジションです。

パワーポジションをうまく作ることができれば、物理的にも人の構造的にも、安全で楽な動き、さらにスポーツでは素速かったり、力強かったりする動作の準備が整います。

位置

頭から足へ向けて観察するように人を横から見てみましょう。

イスに腰掛ける時の姿勢です。頭、胸、膝、足が直線的に並んでいる状態で立ち姿と同様、胸を張り、腰は反らない丸めないのがポイントです。

足の付け根(鼠蹊部)をたたみ込んだイメージとし、膝はつま先の真上にくるようにします。

さらに正面から見た際、つま先はやや外を向き、膝(お皿の中心)は足の人差し指の真上辺りへ向いていると良いです。

感覚・意識

立ち姿勢と同様に下(足の裏)から頭に向けて整えます。

足の裏

立ち姿勢と同様、全てが均等に乗っている感覚であればOKです。

骨盤

立ち姿勢と同様、骨盤を立てて中間に保ちます。

腹部腰部(腰回り)

息を吸い切った状態で下腹に力を入れる(横隔膜を押し下げるイメージ)

胸椎

胸を張ります。

胸の上に置いておきます。目線を斜め前にし、後頭部を後ろへ倒しながら顎を引きましょう。

尾花:急にパワーポジションを取りましょう、と言われてもなかなか難しいですね。趣味で習っているサッカーの時、大事なチャンスでボールに力が伝わらなくて悲しい気持ちになります。

金森:ヨガと違い、サッカーは瞬発的な動作ばかりですし、道具や相手があることなので様々な物に影響を受けますよね。

ヨガを継続すれば身体のコンディションが整っていく

UnsplashAvrielle Suleimanが撮影した写真

金森:少し細かい話になりますが、運動指導の現場では体幹、軸、肩甲骨、股関節という言葉を使い、自分の姿勢や重心をどうコントロールするかが重要だと伝えています。

サッカーに限らずアスリートの「体幹が安定している」と言わるのは頭から背骨のライン(軸)がコントロールされ安定した状態のことを指すことが多いように思います。

また「股関節が使えている」というのは体幹部の最下部である骨盤と下肢のジョイント部分が股関節であり、その部分がコントロールできているかということです。

ちなみに股関節というのは球関節であり、動きの自由度も高く、また殿部や大腿部の大きな筋肉が関節を構成しています。これらの筋肉が状況によって柔軟であったり、強く、速く動く事が目的に応じてコントロールできているかが重要です。

最後に「肩甲骨の動きがいい」です。物を操作する時はほぼ上肢の先端の手で行います。その上肢の動きは肩甲骨の動きを伴っており、肩甲骨は体幹部(肋骨)についています。

つまり、肩甲骨の動きをコントロールできないと体幹の向きや動き、さらには重心に影響がでます。

良い姿勢で止まり、重心移動をさせながら動きを生む、これが運動の根本なんです。

きれいに立つこと、そしてパワーポジションについてスポーツ現場での言葉を中心にお話しましたが、ヨガを通して自分の体と向き合うことで、徐々に自然に良いパワーポジションの感覚も掴めるようになってくると思いますよ。

尾花:ありがとうございます。姿勢と一口に言っても、とても奥深い世界でした。

スポーツの世界では、良い姿勢が良いパワーを生み出すと言われますが、日常のなんとなく不調の改善にも役立つわけですね。何気なく捉えていた体のことにどんどん興味が湧いてきました。次回も楽しみにしています!


参考情報:神奈川県川崎市にある体と心を動かす空間、Spazioのホームページ

毎週土曜日20:00〜21:00開催

ヨガを通じて自分の内面を見つめ、体の使い方や心のあり方を捉え、身体のパフォーマンスを最大限発揮すること、怪我を予防することを目的に行います。様々なスポーツに共通する動き 「立つ」「走る」「止まる」「ねじる」 この4つにフォーカスし、ヨガのポーズや呼吸、瞑想を通じて微細な体の感覚を感じ取り、精神の集中とリラックスで心の動きも見つめます。

もっと詳しく
連載:コンディショニングとヨガ

第1回 - トレーナーに聞く日常をより良くする選択

ヨガが身体のなんとなくの不調を改善する分野で見直されています。コンディショニングのプロから見たヨガの効果について解説します。

第2回 - ヨガを続ければ身体の不調が改善する理由

二つの姿勢に注目しながら、重力に逆らわない本来あるべき姿勢を学び、ヨガが継続することで得られるコンディショニングの効果を学びます。

尾花理恵子

ヨガインストラクター・アーユルヴェーダセラピスト ヨガ&ウェルネススタジオYu Co-Founder・Operational Director 自分をいたわるヨガとアーユルヴェーダ、スポーツコンディショングヨガをテーマに活動中。マイナビウーマン #1日5分のすっきりヨガ 監修。 2021年栃木県佐野市にUターン移住。地元の自然を満喫しながら東京圏へ通勤。心穏やかに生きることを目標にしている。