睡眠は私たちの疲労回復や肌細胞の再生、記憶などに深く関わっています。では睡眠の効果を最大限高めるにはどうしたら良いのか?睡眠には3つのホルモンが関わっているのですが、これに注目すると普段の生活習慣の改善ポイントが見えてきます。ちょっとした変化であなたの睡眠が劇的に変わります。
前回に引き続き、睡眠について深堀していきます。
睡眠は8時間以上?睡眠の質が大切
慢性的な睡眠不足が及ぼす心身の影響は大きく、様々な健康リスクを高めます。肥満、肌荒れや潤いの不足、記憶力低下などのアンチエイジングに関係する影響に加えて、様々な精神疾患や糖尿病などの生活習慣病などの健康リスクと関係しています。前回の記事にも記載していますが、日本人の平均睡眠時間は世界に比べても少ない状況です。また睡眠と健康リスクとの関係は深く、睡眠時間を今以上に確保すべきであることは間違いありません。
参考記事:睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで
では何時間寝れば良いのか?「睡眠は8時間以上はとったほうがいい」とよく言われますが、実のところ置かれている環境によって個人差もあり、はっきりとした科学的根拠はないそうです。ダラダラと寝続けても睡眠から得られる効果を期待できるはずもありません。睡眠の「時間」とともに大切なのが、睡眠の「質」なのです。
睡眠に関わる3つのホルモン
睡眠の質とは「睡眠から得られる効果を最大限活かす」と考え、具体的にどうすれば質の高い睡眠を得られるのか?を考えてみます。それには睡眠に関係するホルモンに注目し、それぞれのホルモンの分泌を高める習慣を日常に取り込んでいくことが大切になってきます。
睡眠に関わりのあるホルモンは次の3つです。
1. メラトニン
メラトニンは就寝の1〜2時間前になると分泌され、入眠を円滑にするホルモンです。メラトニンは日中には分泌されず、夜になると副交感神経を刺激して眠気を誘うので「睡眠ホルモン」とも言われています。
就寝前に分泌されるメラトニンですが、メラトニンを適切に分泌させるためにはセロトニンというホルモンをしっかりと活性化させる必要があります。セロトニンは日光や光に反応し、朝に分泌されることで交感神経を刺激し、私たちの日中の活動を支えています。
日中のセロトニンが活性が、夜のメラトニンの活性と関係しているため、この二つのホルモンは私たちの体内時計、概日リズム(サーカディアンリズム)を司っているのです。
2. コルチゾール
コルチゾールは就寝直後の深い眠りの際は分泌が抑えられ、睡眠の後半になって徐々に分泌されるホルモンです。
コルチゾールは、ストレスを感じた時に脳下垂体からの命令を受け、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンで、ストレスホルモンと呼ばれています。ストレス=コルチゾールと睡眠は結びつかないかもしれませんが、コルチゾールは血圧や血糖値の調整や胃酸の分泌などを調整する役割を持っています。
もともと野生に生きていたヒトは、危険に遭遇した場合にアドレナリンを分泌し交感神経を刺激すると同時にコルチゾールを分泌することで血圧を高め、直ちに闘いや逃避行動をとれるようにする役割を持っています。睡眠におけるコルチゾールは、起床の3時間ほど前から分泌され起床時間にピークを迎えます。つまり私たちが覚醒し、スムースに起床できるよう準備をするために用いられると考えられています。
昼夜の生活リズムがしっかりしている人は、体内時計によって朝決まった時間に目が覚めますよね。これはメラトニンとセロトニンの活性によるものですが、コルチゾールはスムースな目覚めを支えているのです。
3. 成長ホルモン
成長ホルモンは就寝直後に訪れる深い眠り、最初のノンレム睡眠時に1日の中で最も分泌量が多くなるホルモンです。「睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで」でも取り上げていますが、最初のノンレム睡眠で私たちの脳は活動を停止する一方、成長や疲労回復そして肌の潤いやハリ、つやなど肌細胞の再生を促す役割を持っています。
悩み事などのストレスにより、スムースに入眠できずぐっすりと眠れない状況にある場合、成長ホルモンの分泌が抑えられてしまうので就寝前にリラックスしておくことがとても大切です。
質の高い睡眠をもたらす5つの習慣
これらのホルモンは睡眠の質を高める習慣を考える上で大きなヒントを与えてくれています。では実際にどのような習慣を作っていくべきなのか?具体的にみていきましょう。
1. 朝日を浴びてサーカディアンリズムを整える
まず、起床時に朝日を浴びて、セロトニンを活性させることです。セロトニンが活性すれば昼間は活動的で充実していられるだけでなく、夜になるとメラトニンがうまく活性し副交感神経を優位にし、スムースな眠りの準備ができます。
いわゆる生活リズムですが、人間の概日リズム(サーカディアンリズム)が整うことで、自然と眠くなり、入眠直後の深い眠りで成長ホルモンを適切に分泌させ、睡眠の後半ではコルチゾールの分泌が促進されることで、スッキリとした目覚めの良い朝を迎えることができます。
朝、カーテンを開けてしばらく朝日を浴びることでもいいですし、できれば軽めの運動としてウォーキングやジョギングを通して朝日を浴びることを習慣にしてみてください。この朝の習慣で睡眠サイクル全体の質が高まるのです。
2. 夕食を終えてから3〜4時間は時間を置いて睡眠に入る
食べた直後に就寝してしまうと、そのまま胃腸が消化吸収を続けてしまい入眠直後に訪れるノンレム睡眠が阻害されてしまいます。その結果、成長ホルモンの分泌が抑えられて疲労回復や肌細胞の再生がうまくいかないということになります。
消化時間は食べたものにより異なりますが、おおよそ2〜4時間かかります。そのため3〜4時間は置いて睡眠にはいることが大切なのです。
3. 入浴で副交感神経を高める
眠れない原因の一つは、やはりストレス。その日にあった会社のモヤモヤ、明日にやってくる憂鬱な出来事などがあれば、当然、悩み事が多くなり寝つきが悪くなりますよね。寝ている間も考えていたなんてことはよくあります。これもまたノンレム睡眠が妨げられてしまうので、寝る前には副交感神経を高めリラックスする習慣を身につけましょう。
人によりリラックスする方法は様々ですが、一つはゆっくりと入浴することです。シャワーだけでなく、湯船に浸かることを意識してください。入浴は血流を高めるだけでなく交感神経の働きを抑制し、副交感神経の活動を高めますので、入浴しない、またはシャワーよりもリラックス効果は高いといえます。
入浴によるストレス解消については以下の記事で取り上げていますので、あわせてご確認ください。
参考記事:ストレスはその日のうちに解消を – 効果的な水素入浴法
4. 入眠前に部屋を暗くし、スマホやPCは操作しない
ついベッドの上でスマホをいじってしまうという方は多いと思います。しかし、部屋中を照らす照明やスマホのライトはメラトニンを抑制することがわかっています。メラトニンは、照度(明るさ)の強さはもちろん、光にさらされる時間の長さにより抑制率が高くなります。また、光のスペクトル(波長)にも依存しており、460nm付近(青色光)の短波長の光で最も大きいことが明らかになっています。※1
青色光は、最近でいうと「ブルーライト」とも呼ばれますが、紫外線にもっとも近く、強いエネルギーを持つ光です。青色光はスマホ、タブレット端末、ゲーム機、液晶テレビなどのデジタルディスプレイで強く発せられ、メラトニンの分泌を抑制してしまうのです。※2
そのため、寝る前には部屋を暗くすること、そしてデジタルディスプレイが発する青色光を遠ざけることが重要です。
5. ヨガの究極のリラックスポーズ、シャバーサナでストレスを鎮める
そして睡眠の質を高める最後の仕上げです。
究極のリラックスポーズと呼ばれるヨガポーズ、シャバーサナをご存知でしょうか?ポーズといっても静かに仰向けに横たわるだけ。ベッドの上で行えます。仰向けになって横たわるだけならいつもやっていると思う方もいるかもしれません。
しかし、シャバーサナは仰向けになり、深くゆっくりとした呼吸を行いながら、より自分の内側に意識を向けるヨガポーズです。そして寝たままマインドフルネスな状態へと自分を導くことで自分の感情を客観的に見つめ、会社や人間関係からくる苛立ちや不安などのストレスを鎮めるのです。
また、シャバーサナは副交感神経を優位に立たせるので、ノンレム睡眠へスムースに入ることができ、ぐっすりと眠れるでしょう。ノンレム睡眠に適切に入れば、脳は嫌なことを忘れてくれます。また、その間、成長ホルモンの分泌を始めますので、副交感神経を高めて入眠することはとても大切なのです。
シャバーサナを実践する方法は以下の記事で詳しく取り上げています。今日から是非実践してみてください。
参考記事:シャバーサナ- 毎日15分で心と身体に究極のリラックスを与える方法
寝る前のルーティンをつくり睡眠の質を高めよう
現代社会の技術の発展により便利になった一方、生活習慣病や精神疾患などのメンタルヘルスで問題が大きくなっています。皆さんも感じている方もいるかもしれませんが、この2つはどうやら関係がありそうです。私たちに本来備わっている神経や体の機能や仕組みは複雑で、これらの新しい技術がもたらす生活環境の変化にうまく適応できていないのかもしれません。
今回紹介した5つの習慣は決して難しいものではありません。いつもの習慣に、やってはいけないことを理解して、ほんの少し意識を変えるだけ。皮肉ですが、太古から備わっている私たちの体の機能と相性が良い環境を取り戻していくということなのかもしれません。
以下の記事で睡眠不足と健康について取り上げています
- 睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで
- 睡眠の質を高める5つの習慣で心と身体に真の休息を
- 幸せホルモン セロトニンを増やして幸福感を高めよう
- 人は野生に帰れば幸福と健康を取り戻せる – 食事と健康の11のルール
- ストレスはその日のうちに解消を – 効果的な水素入浴法