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人は野生に帰れば幸福と健康を取り戻せる – 食事と健康の11のルール

私たち人類は、農耕を始めるずっと昔から狩猟中心の野生の生活を送っていた。実は私たちの身体や脳は狩猟採集生活に最適化されたままのだそう。そのため人類本来の状態、つまり野生に身を置くことで健康と幸福な人生を取り戻すことができるという。文明社会の中で野生を取り戻す生活はいかようなものか?食事や健康のルールを11つにまとめた。

人類が誕生したのは600万年前。そして農耕を始めてからたった1万年しかたっていない。それまでの人類は狩猟中心の野生の生活を送っていた。実は、私たち人類はこのころから全くアップグレードしていないらしい。そのため人類は、自ら築き上げた文明に、私たちの体や脳は最適化されておらずコンフリクトしている。

生活習慣病と自己免疫疾患は高度に発達した文明の代償

確かに文明は医学を発達させ、そのおかけで私たちは寿命を延ばし、人口増を果たした。しかし、人類は発達した文明の代償として肥満、2型糖尿病、心疾患、がんといった生活習慣病の蔓延や花粉症に代表される自己免疫疾患という新たな病気を手に入れた(先住民にこれらの病気は見られない。)…。

これらはジョンJ・レイティ、リチャード・マニングによる「GO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス」の主張だ。本著は人間は、狩猟採集民族の生活、つまり野生に帰ることで健康だけでなく幸福を取り戻せるという。また、狩猟採集民族と食事、運動、睡眠、思考、生き方といった側面から現代人と対比。全く関係のないと思われる、これらの側面が密接に関係があることを説く。

一見、信じがたいと思うかもしれないが、詳細かつ最新の科学的な知見から記されていおり大変説得力がある。今回は刺激的なアイデアに溢れる本著から真の健康と幸福を得るための習慣とルールをご紹介しよう。

野生の身体を取り戻す食事のルール

ルール1. 低炭水化物の食生活とし、なるべく穀物を摂らない

そもそも人類は高密度の炭水化物を必要とせずに発達してきた。しかし農耕の発明を境にして摂取する炭水化物の量が増大。そして炭水化物摂取に伴う様々な病気にかかりやすくなっている。

現代人は炭水化物の摂取が8割にも及ぶ状態であり、炭水化物に含まれるブドウ糖の過剰な摂取が、様々な疾患を引き起こしているとみられている。

より正確に言えば、血中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い場合、インスリンが分泌され血糖値のバランスを保とうとする。結果、グリコーゲンとして筋肉に貯蔵するか、それでも有り余る場合には脂肪に変え貯蔵するというメカニズム。

つまり問題はブドウ糖の過剰摂取であり、そのため「炭水化物を抜けばいい」という単純な話でもないことに注意しよう。

ルール2. ソフトドリンク、ジュースは飲まない

もうお分かりだろうが、現代人は炭水化物といった食べ物からだけでなく、飲み物からも糖を摂っている異常な状態だ。過剰摂取を絶つためには飲み物から糖を摂らないことも重要。

ソフトドリンク、ジュースなどの砂糖水は飲んではいけない。

ルール3. トランス脂肪酸はとらない

今やトランス脂肪酸の危険性が指摘されて久しい。つまるところ人類の消化システムが経験したことのない脂肪が、化学的に作り出され、これが免疫反応を起こし心臓病や動脈硬化のリスクを高めている。

ルール4. 加工食品は摂らない

よく「加工食品は食べるな」という話をよく聞くが、これは上記の3つに関係している。加工食品は炭水化物とトランス脂肪酸を基盤にしているからだ。加工食品は避けよう。

なお、著者も認めているが糖を一切とるのをやめろとは言っていない。
現代の食事がいつの間にか(急速に)炭水化物(糖)であふれている状態で、私たちは気づかぬうちに糖を過剰摂取する環境に置かれていることに気づこう。人類が狩猟採集民族であった頃はそもそも穀物などなかったのだ。

野生の身体を取り戻す睡眠のルール

ルール5. 睡眠を8時間以上とる

現代人は睡眠時間が削られる傾向にある。
しかし、睡眠は私たちの想像以上に健康と関わっていることが実証されつつある。

睡眠不足がもたらす様々な影響がわかってきたが、その一つは肥満との関係。最新の調査で睡眠不足になると前述した炭水化物と糖を欲しがることが分かっている。

さらに睡眠不足は免疫系に混乱をきたすこと、記憶に問題が出ることなどがわかってる。

睡眠は多く取るほうがいい。8時間で満足せず昼寝なども積極的に取り入れ、睡眠を十分取ろう。

参考記事:睡眠不足がもたらす6つの健康リスク – 肥満から肌老化、生活習慣病まで

ルール6. 光にさらされるタイミングを昼夜・自然の周期に合わせる

光は睡眠のリズムに密接に関係している。光は松果腺という目の裏にある小さな腺に当たると睡眠と概日リズムを制御するホルモンであるメラトニンの生成が抑制され、睡眠が阻害される。テレビ、スマホなどが発するブルーライトは、特にメラトニンの分泌を乱すと言われている。

光にさらされるタイミングを調整し、昼夜と季節の自然な周期に近いものにしよう。

また、メラトニンが適切に分泌されるには三代神経伝達物質の一つ、セロトニンを増やすことが効果的。セロトニンについては以下の記事で詳しく取り上げているので参考にしてほしい。

参考記事:幸せホルモン セロトニンを増やして幸福感を高めよう

ルール7. できる限り一人で寝ずに誰かと寝る

狩猟採集民族は常に危険と隣り合わせで完全に寝落ちしてしまっては捕食者から身を守れなくなる。集団で寝ていたのは常に誰かが起きており危険を察知する役目を各々が担っていたから。つまり、「安全である」という感覚が必要なのだ。これは私たちの本能に書き込まれているもので現代人にも通じる。

そのため、可能な限り誰かと一緒に、もしくは犬や猫などのペットでもいい、一人で寝ないことが望ましい。

野生の身体を取り戻す環境のルール

ルール7. マインドフルネス瞑想を習慣にする

マインドフルネス瞑想は「今、ここに」注意を向けることだが、狩猟採集民族が自然環境の中で生き延びるために必要なことでもある。

現代に生きる私たちもマインドフルネス瞑想を習慣にすることで、様々な雑音(雑念)の中で私たちはいつでも反応できるよう注意し警戒することができる。

また、私たちにとっての理想の状態とは、騒音の溢れる状態でも静まりかえった状態でもなく、ストレスがある状態でもなくリラックスしている状態でもない。両極の間で身体がうまくバランスを保つこと。

マインドフルネス瞑想はこれらのバランスを保ち、注意力や集中力が高い状態を維持するのに役立つ。あなたのルーティーンの中にマインドフルネス瞑想を取り入れよう。

参考記事:マインドフルネス瞑想の効果 – 人生が変わる科学的な実証を得た瞑想法

ルール8. なるべく自然の中に身を置く

自然の中に身を置くことは健康に良い影響を与えてくれる。この効果はコルチゾール値、心拍数、血圧といった客観的数値で計測可能。また、自然と触れ合うことは微生物と接触することになり、それが体内の免疫系を鍛え、調子を整える。花粉症などの自己免疫疾患と闘う力も授けてくれる。

また前述した通り、日光を浴びることでメラトニン分泌と睡眠サイクルも調整されることになる。

私たちにとって自然の中に身を置くことで得られる恩恵は果てしがない。

野生を取り戻す運動のルール

Photo by Trail Running At Squaw by Squaw Valley Alpine Meadows.

ルール9. ランニングするなら戸外を、できればトレイルランを

ランニングは戸外を走ることになり自然に身を置くことにもなる。ジムのランニングマシンから外に飛び出そう。

戸外を走るという意味では、トレイルランニングはさらに相乗効果が高まる。トレイルランニングは複雑な地形、アップダウン、気候など、様々な変化の中で、身体の様々な筋肉を使うスポーツ。トレイルを走るだけでかなりの注意力と集中力が必要になる。

これらの変化に富む動きが、私たちの脳に最高の刺激を与えてくれる。

走るならトレイルを目指そう。

ルール10. ジムに行くなら、できればクロスフィットを

クロスフィットとは米国で生まれたファンクショナルムーブメント(人間の機能的動作)に焦点をあてたフィットネスプログラム。ランニングマシンやウェイトトレーニングマシンが並ぶ一般のジムとは異なり、自重と器具を使いながら多様なワークアウトをこなしていくもの。実はこの多様性が重要な要素となる。

人類の最も際立った特徴は二足歩行。しかし突き詰めると、多様で複雑な運動を可能にする筋肉と骨格を持っていることが人類の最大の特徴なのだと言う。

ジムでお決まりのランニングマシンに乗りイヤホンをつけTV画面を見ながら走るのではなく、多様性が求められ、脳に刺激をもたらすクロスフィットを選びたい。

ルール11. ヨガで自律神経を制御する

幸福と健康を考える上で食事と運動、そして私たちの脳は一見関係がないように思われるが、実は迷走神経を通じて全てがつながるという。

迷走神経は自律神経系と密接に繋がっており、全ての感情の結果として身体の反応を制御する役割を担っている。ある事象に対して心拍数があがるなど呼吸の頻度や数に現れる通り、これらは迷走神経と自律神経を通して身体に命令を出しているのだ。

ヨガの呼吸法はまさに自律神経を調整することができ、不安や恐怖に対する本能的な反応を抑制できる。マインドフルネス瞑想とともにヨガを習慣化することで、心身ともにバランスを保てる身体になる。

参考記事:呼吸で自律神経をコントロールできる、その秘密。


読めばわかるが、著者の主張である野生に帰るというの は文明を捨てることを意味していない。築き上げた高度な文明の中でも、これらのルールを生活の軸に置くことで、文明病に対するリスクを低減できるだけでなく真の健康と幸福を得られるというもの。

本著にはここで紹介しきれない、刺激的なアイデアやルールが多く掲載されている。気になった方はぜひご一読を。


参考: GO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

幸せや幸福については以下の記事を読むとさらに詳しくなります

Yu Staff

最初はサーフィンのために始めたヨガですが、ヨガから、ワークアウトや食事、呼吸法、瞑想など、もっぱら人間の脳、身体と心の繋がりへの興味が尽きない。最近はビジネス書よりもこれらをテーマにしたノンフィクションばかり読んでいます。