抽象的で分かりにくいヨガには、誤解が多く存在します。しかし、ヨガが抽象的である理由は人間の根本に根ざした素晴らしい哲学や効果があるからなのです。あなたが抱くヨガのイメージもここの中に含まれているかもしれませんが、誤解のままにしておくのはもったいない。ぜひ、ヨガの本当の実力を確かめてください。

ヨガの誤解1. ヨガは身体が硬いとできない、わけでない

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よくある勘違いとして、ヨガは身体が硬いとできない、という誤解。

ヨガのアーサナ(ポーズ)は筋力や柔軟性、バランスが求められるものも確かに多いです。しかし、身体が硬くてもとれるアーサナはたくさんあります。ヨガを継続的に取り組むことで、徐々に柔軟性や筋力、バランス力を高めていけばいいのです。
また、ヨガスタジオには必ずといっていいほど、初心者を考慮したプログラムが用意されています。ですからいきなり難易度が高いアーサナをとらされるといったことはありません。

もしヨガに興味はあるが、身体が硬いからといった理由で躊躇しているあなた。
身体の硬さは全く問題になりませんから、ご安心を。


もっと詳しく:身体が硬くてもヨガすべき理由 – アーサナは見た目ではなくプロセス

ヨガのアーサナは見た目の美しさを競うものではありません。ですから身体が硬いからといって躊躇しているのは得策ではありません。また、本記事では自己の内観のプロセスについて解説しています。

 

ヨガの誤解2. アーサナはストレッチが目的ではなく、自分との対話の手段

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確かに様々なアーサナを通し身体をトレッチしていきます。しかし、通常のストレッチと決定的に異なるのは、柔軟性を高めることだけが目的ではないところ。

何かと言うと、ストレッチの感覚を意識しながら、自分の身体に向き合うこと。それがヨガであり、アーサナをとる目的なのです。身体を伸ばした時に感じる痛み、、今日はどこが痛むのか、それは心地が良い痛みか?もしくは不快な痛みなのか?そうした感覚に集中します。また、アーサナをとる間バランンスを維持しますので、やはり意識を集中します。こうした感覚とバランスなど、意識の集中を通して身体と向き合ことが大切なのです。

ヨガにおいて、あくまでも瞑想同様、アーサナも”今”に集中し、”自分と対話”する手段です。
そういう意味で、アーサナは身体的な感覚がありますので、普段は感じない自分の身体と向き合うという点で優れているのです。


もっと詳しく:自分と向き合うための4つのステップでヨガをレベルアップ

自己の気づきや自己の内観…。どうやるのかと気になる人は多いと思います。単にアーサナをとっている自分からレベルアップするには、やはり自己の内観ができるべき。今回は、具体的にどのような点に注意して自己の内観を進めるかわかりやすくまとめています。

 

ヨガの誤解3. ポーズ(アーサナ)をとるだけがヨガではない

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これもよくある誤解の一つ。
みなさんが目にするヨガの光景は、必ずといっていいほどアーサナをとっているもの。そのため、ヨガ = アーサナ(ヨガポーズ)というイメージがあると思います。

しかし、ヨガの始まりは、瞑想と座法くらいしかありませんでした。実はアーサナを伴う動的なハタヨガが生まれてきたのは12〜13世紀頃。約4500年と言われる、長いヨガの歴史からすると実は比較的最近なのです。それまでの瞑想と座法だけでは修行法として難しく、アーサナを伴うハタヨガが生まれてきたと言われています。

ですから、ヨガとはアーサナだけを指しているではなく、アーサナと瞑想、呼吸法の3つの要素が統合されたものが「ヨガ」なのです。

TULAでもマインドフルネス瞑想の効果についてご紹介しましたが、現代の科学により、瞑想は脳に良い影響をもたらすこと、そして身体的によい効果をもたらすものであることが解明されてきました。
また、呼吸法は自律神経の副交感神経と交感神経に働きかけることがわかっています。自律神経を自分で操作することはできないと言われていましたが、最近では呼吸を通じて自律神経に働きかけることができ、自分でリラックスした状態を作り出せることもわかっています。

このように現代科学により、それぞれ効果が実証されているもの。この3つが統合されたものがヨガなのです。


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科学的に証明されたマインドフルネス瞑想の効果について解説。また、マインドフルネス瞑想の手順と方法を詳しく説明しています。

もっと詳しく:呼吸で自分の心をコントロールできる、その秘密。

呼吸と自律神経は密接な関連があり、深くゆっくりとした腹式呼吸で自律神経を通じて自分の心を操作できることがわかっています。ヨガのリラクゼーション効果と深い関係がある呼吸による心のバランス調整について解説しています。

 

ヨガの誤解4. ヨガはスタジオだけでなく、どこでもできる

確かに初心者の頃は、無理なアーサナによって怪我するなど、リスクがあります。ですから、やはり適切な知識をもったヨガインストラクターのもとヨガを実践すべきです。しかし、無理をしないというルールを守り、自分の実力があがってきた頃は、自宅やその他の場所でも行えますし、積極的に実践すべきです。

毎朝30分早く起き、仕事が始まる前の朝こそ、ヨガを通して自分に集中した時間をとる。仕事から帰ったらのなら、リラッックス状態を自ら作り出す。そうした自分の体調に合わせて、ヨガを実践するのが理想です。

また、仕事場でアーサナは取れないまでも、ヨガの瞑想や呼吸法のテクニックが活かせます。仕事場では、目の前の状況に対する自分の感情は実に様々。ストレスを感じる場合には意識的に目を閉じ、瞑想と呼吸に意識を向けることでその場でストレスを軽減できます。また、怒り、嫉妬などのネガティブな感情が沸き起こった場合には、同様に瞑想と呼吸法は優れた解決策です。

このようにヨガは、時間や場所に関わらず実践でき、その場の自分の状況に応じて活用できる、スキルなのです。


もっと詳しく:ヨガ初心者が自宅ではじめる場合のデメリットと注意点

ヨガはいつでも、どこでも始められます。特に自宅で始められる注意点とポイントについてまとめています。

 

ヨガの誤解5. 単なるエクササイズではなく、エンパワーメント

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ここまで読み進めていただければヨガが単なるエクササイズであるといった見方はかなり薄れているのでは?しかし、もう一つ知っておいて欲しいヨガの側面をご紹介します。

ヨガには、八支則と呼ばれるヨガ実践のための8つのステップがあります。八支則とは、2〜4世紀頃にインドの哲学者パタンジャリパタンジャリが説いた「ヨーガ・スートラ」の中に出てくる、ヨガ哲学の基本的な教え。

ここで全てを説明することはできませんが、簡単に説明すると、1番目の「ヤマ」、2番目の「ニヤマ」は、日々の社会的・個人的行動規範が定義されており、最も基本的ながらも実践するのが難しい教えとされています。3番目としてようやくアーサナの実践に入り、4番目は呼吸法。これらを通して5番目として自己の感覚の制御にはいり、6番目として精神統一・集中の段階に。7番目になり瞑想を学び、最終段階となる8番目に悟りの境地に達するという流れです。

言いたことは、八支則こそがヨガだ!とか、この順序が正しいかのか?とか、悟りとは何か?ではありません。こうした教えやヨガの側面を知ると、私たち思い描くエクササイズ、美容の手段といったイメージよりもずっと深いものだということです。

1番目の「ヤマ」は、非暴力、噓をつかない、人のものを盗まないなどを含む5つの心得。2番目の「ニヤマ」は清浄、現状のものに満足する、自制といった日常で実践すべきこと。そして、上述したように自分と向き合っていくアーサナや呼吸法、瞑想が続くわけですが、いずれも複雑になった現代社会で忘れがちな基本的な心、動作です。

常に新しいエクササイズが紹介される現在、残念ながら消えていってしまうものも少なくありません。しかし、ヨガは紀元前に出現し、形を変えながらも、絶えることなく現代に脈々と受け継がれてたのは、人間の身体だけでなく、内面までをも扱う「深さ」にあり、それが一定の理を持っているからだと思うのです。

ヨガを実践することは、現代社会で忘れかけた基本的な人間の心得であったり、倫理を伴った基本的動作を思い起こさせ、執着や嫉妬を遠ざけ、自分を律すること。そして自己の内観を通して様々な問題を内側に捉えること、本当の自分を知ることを通じ、社会と調和、自然と調和、相手との調和を実現する具体的なテクニックを学ぶということです。

つまり、ヨガは私たちに、身体的、精神的エンパワーメント(自己啓発)として作用するのです。


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いかがでしたでしょうか?

抽象的で分かりにくいヨガだからこそ誤解がたくさんある一方、人間の根本に根ざした素晴らしい哲学や効果があることを少しでもご理解いただければ嬉しいです。この記事でヨガに一歩踏み出すきっかけになれば!

そして、ヨガをやっている方で、少しでもヨガの魅力を伝えたいと思う方は、ぜひシェアしてください。

Yu Staff

最初はサーフィンのために始めたヨガですが、ヨガから、ワークアウトや食事、呼吸法、瞑想など、もっぱら人間の脳、身体と心の繋がりへの興味が尽きない。最近はビジネス書よりもこれらをテーマにしたノンフィクションばかり読んでいます。