今回はTULA代表の早坂理恵をホストとして、ゲストをお呼びしてインタビュー形式でヨガについて深く掘り下げていきます。ゲストはシヴァナンダヨガの正式指導者であるサラスワティ先生。彼女とお話ししているとヨガのイメージが180度変わります。また、サラスワティ先生は深い知識と経験をお持ちなのにもかかわらず、驚くほど謙虚な方。そのギャップもまた魅力的です。
今回のお話しの結論から言えば、「ヨガは自己統治、セルフコントロールを学ぶこと」。その結論に至るまでにはシヴァナンダヨガのトレーニングのお話、シヴァンアンダヨガの基本原理など、サラスワティ先生が体験したことに関係しています。先生の経験を聞きながら、ヨガについて考えていきます。
GUEST:サラスワティ先生
シヴァナンダヨガ正式指導者として活躍するインストラクター。ヨガに関する深い知識探求と実践を通し、多くの人々へヨガを伝えるため、ヨガ教育に情熱を燃やす。
ヨガをライフワークとする女優であり、TULAの企画や方向性を決めるDirector。「私たちの真の健康は、社会と自分の調和こそが秘訣であること。そしてそれらは外から獲得できるものではなく、内からもたらされるもの。」と意識を強くし、ヨガだけでなくアーユルヴェーダやマクロビオティックなど食事面からも真の健康を考える。
外的な束の間のリラックスではなく、内なる平穏と静寂
早坂: まずは、本格的な話に入る前に、サラスワティ先生のことを読者にご紹介したいと思います。サラスワティ先生とヨガの関わり、特にシヴァナンダヨガとの出会いからお聞かせいただけますか?
サラスワティ先生:2006年、知人をきっかけに数多くあった流派の中から正統的で古典的なシヴァナンダヨガを知りました。その当時はヨガがとても勢い良く浸透していた時期で、エクササイズ的なフィジカルなものから美を求めたファッション的ともいえるヨガまで、街には多様なスタジオが点在していました。右も左もわからなかった私にシヴァナンダヨガを教えてくれた知人には今では大変感謝しています。
私がシヴァナンダに影響を受けたのは、最初に読んだスワミ・ヴィシュヌ・デヴァナンダ著「ヨーガ大全〜身体と精神の開眼〜」ですね。その衝撃は深く、それまで度々持っていた人生の疑問がその一冊で解かれていきました。今、思い返せばリトリート参加中に眠れず、読み止まらず、頭の中や細胞が覚醒したかのように目覚めたのがヨガの始まりだったと思います。
その後、シヴァナンダヨガの瞑想と呼吸法の経験を重ねて、自分の内側が静まることを知りました。これは自分の中で大きな改革でした。
早坂:「自分の内側が静まる」というのは、ヨガにおける重要なテーマですよね。もう少し詳しく教えていただけますか?
サラスワティ先生:従来の外的アプローチ、言い換えると「いい気分になる」ように何かを得る、行動する、では、結局、束の間に元の状態に戻ってしまいます。しかし、それとは真逆なアプローチである、「意識を内側に向けて、ただ静かにする」ことを行うと、騒がしかった心の波は平穏に静寂になっていきます。
「答えは自分の内側にある」と、スワミから教わったその恩恵は果てしなく広がり、それは私自身の旅の大きな一歩となりました。自然と人と身体と心の繋がりを知る、この素晴らしい体系を人々に伝える使命を感じ、シヴァナンダヨガ正式指導者となりました。
完全に俗世から離れた環境で身体と心が清らかに
早坂:ヨガインストラクターになる上では、全米ヨガアライアンスなどが有名ですよね。シヴァナンダヨガの正式指導者になるには、どのようなトレーニングを受けるのですか?
サラスワティ先生:シヴァナンダヨガ講師はすべて、出家僧のスワミと共に1ヶ月間、海外のアシュラムで規則正しい生活とトレーニングを受け、試験(筆記と実技)合格の後、卒業します。
私が滞在したのはサンフランシスコから約3時間程のノースイースト郊外、美しい自然の中のシヴァナンダ・アシュラム(修行する場)でした。シヴァナンダ・アシュラムには、世界各国から老若男女およそ30数名の人々が集まっていました。
日の出と共に起床し、サットサンガと呼ばれる瞑想、チャンティング ※、そして講話から1日は始まります。スワミから哲学、インド聖典なども含めたヨーガの講義を受け、朝夕2回のアーサナクラス(マントラ※、プラナヤマ、瞑想、アーサナ、リラクゼーション)があり、また食事はアーユルヴェーディックな菜食を2食。
※チャンティング:マントラにメロディをのせて歌う、または神々への賛歌を歌うこと。プラクティスに入る前後には賛歌と感謝の意をこめてチャンティングを行います。音が身体に響き渡りチャクラを刺激し、神経を落ち着かせたり感情をポジティブな目標に向けることができ、身体と微細身に良い効果をもたらします。
※マントラ:その復唱または反復によって完全さや自己実現の達成を可能にする聖なる音節または連続した言葉。マントラの復唱は集中力を高め、マインドが強化されます。ヨガでもっとも直接的な集中の練習は、ジャパと呼ばれるマントラ瞑想、聖なる言葉を心の中で、あるいは声に出して繰り返します。
さらに、奉仕の精神を養うカルマヨガを行うなど完全に俗世から離れた環境で過ごし、みるみるうちに身体と心が清らかになっていきました。笑
早坂:それは国内のヨガインストラクターのトレーニングとは全く違う世界ですね。奉仕をしながら、哲学から瞑想、、食事まで1ヶ月間に渡るのですから、それはとても貴重な体験をされたかと思います。
また、私だけでなく、読んでいる人も先生のお名前である「サラスワティ」が気になっていると思うのですが、どのような意味があるのですか?
知を司る新しい人生
サラスワティ先生:シヴァナンダヨガTTCではイニシエーション※にて、スピリチュアルネームと自分のマントラを希望した修養者一人一人に伝授されます。
※イニシエーション:ヨガサダナ(ヨガ修養)入門儀式
※ スピリチュアルネーム:修養者としての新しい人生につけられた名前
私のスピリチャルネームである、”サラスワティ”とは知恵、勉学、知識、芸術、音楽などの知を司るヒンドゥー女神の名前です。4本の腕を持ち、2本の腕には、数珠とヴェーダ、もう1組の腕にヴィーナと呼ばれる琵琶に似た弦楽器を持ち、蓮華の上に座る姿として描かれています。また、伝授されたマントラは他言無用でお教えすることはできませんが、サンスクリット語で「女神サラスワティにひれ伏します」の意味が込められています。
私のスピリチャルネームを伝授された際、必然を感じたのですが、私の本名についた漢字の一文字と女神サラスワティの持つ意味は同じだったのです。そのことをスワミにお話ししたところ、スワミは深く頷きながら、生まれながらに持つその運命と、今後は知を司る新しい人生を歩むとお話しいただきました。その時、私は言い得ぬ安堵感に包まれたことを今でも鮮明に覚えています。
早坂:それは運命を感じる、すばらしい体験ですね。日本では得難い体験なのでシヴァナンダヨガについてもっと知りたくなってきました。様々な流派があるなか、シヴァナンダヨガについてもう少し詳しく教えてください。
シヴァナンダヨガの統合的なヨガ体系 – 5つのポイント
サラスワティ先生:はい。笑
シヴァナンダヨガは、インドや米国で医師として活躍したスワミ・シヴァナンダ(1887〜1963)を創始者として始まりました。現在、インド北部のリシケシにはスワミ・シヴァナンダが設立したシヴァナンダ・アシュラム(正式にはディバイン・ライフ・ソサエティー)とフォレスト・アカデミー(ヨーガの総合大学)が在り、北米にシヴァナンダ・ヨーガ・ヴェーダンタ・センターを創設。現在では世界40ヶ所のセンターと9ヶ所のアシュラムが運営され、大勢の僧職者や教師によって世界中に広められています。
シヴァナンダヨガでは、古来からの難解なヨーガの知恵や哲学を、現代にフィットするよう、わかりやすく、運動からライフスタイルまで5つのポイントを基本原理としてまとめています。
- 適切な運動(アーサナ)
- 適切な呼吸法(プラナヤマ)
- 適切なリラクゼーション
- 適切な食事
- ポジティブ思考と瞑想
の5つです。
早坂:確かにヨガ哲学であるヴァガバットギーターなどを個別に学ぶのは難解です。ヨガを現代で活用しやすいよう、それぞれの流派でヨガを体系化していますよね。シヴァナンダヨガを深く知るために、5つの基本原理について簡単にご説明いただけますか?
サラスワティ先生:一つ目の運動(アーサナ)では、脊椎を強く、しなやかにし、身体を伸ばして調整し、消化作用や血行を促進、プラーナを増強し集中力を高めます。
二つ目の呼吸法(プラナヤマ)では呼吸のコントロールによりプラーナ(生命エネルギー)をコントロールし、高めることで活力を充電し身体と心を整えます。
三つ目のリラクゼーション(シャバアサナ)は、ヨガに欠かせない重要な要素です。心配やストレスを取り除き全身の筋肉の緊張がほぐれ思考や心の中まで深くリラックスし、充電と回復を促します。また、ストレス克服だけでなく抵抗力も高めます。
四つ目の食事法ですが、毎日食べるものが私たちの身体を作ります。つまり純粋で生命力の高いものを食べることは、そういった身体と心を作ることに繋がります。
五つ目のポジティブ思考と瞑想では、前向きな思考と瞑想により、ネガティブな思考を払いのけて心を鎮め、集中したマインドと意識を生み出し、内面の安らぎを得ます。
これらの5つのポイントは、生活全体の質を高め、日常に組み込みやすいように考えられていますので、身体的アプローチである運動(アーサナ)による身体のケアはもちろん、シヴァナンダヨガでは内面的なアプローチ、つまり心のケアも同時に行うのです。
アーサナ、瞑想、呼吸法を統合し、自己統治を目指す
早坂:ヨガの本質が全てつまっているのですね。「統合的に」、というのはまさに外面と内面が組み込まれていて、さらに私たちの生活に活用できるわかりやすさもありますね。
サラスワティ先生:はい、ヨガから得られるものは、身体と心の関わりを考えながらバランスを保つ方法を身につけること。言い換えるなら「自己統治、セルフケア、セルフコントロール」です。これらの効果を得るためのアプローチとして、身体を健康に保つために必要な運動を網羅した上、その上で心にやすらぎをもたらす呼吸法と瞑想を組み合わせたものにあります。
つまり、アーサナ、瞑想、呼吸法を統合することなのです。
また、シヴァナンダヨガは、ヨーガ哲学ではヴェーダーンタやバガヴァッド・ギーターなどインド聖典を学び、アーユルヴェーダにおける食事法からドーシャ(質)を学びます。クラスはマントラ詠唱から始まり、2種の呼吸法(プラナヤマ)、瞑想、太陽礼拝、基本12のポーズ(アサナ)で構成されています。また各アーサナ間にリラクゼーションを行うことで浸透させ、効果を高めるのも特徴ですね。
早坂:なるほど、ヨガを実践していくと自然と食事への関心が高くなりますが、食事をヨガ体系に取り入れている流派は少ないかもしれませんね。それは良い悪いではもちろんないのですが、食事が含まれていることで、真に総合的な心身のバランスを保つ方法として確立を目指されたのだと感じます。
アーサナ、瞑想、呼吸法を統合し、身体と心を総合的に調整する方法としてヨガを考える…。もちろん、これはシヴァナンダヨガに限ったものではありませんが、5つの基本原理は、難解なヨガを現代の私たちにも理解しやすいよう体系化されていると思います。また、ヨガが本当はとても深いことがよく分かる内容でした!
次回は、さらに会話は深まっていきます。昨今のマインドフルネス瞑想の話題へと。。本インタビューの更新はいくつかの記事更新の後となりますが、ぜひ、楽しみにしていてください。
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サラスワティ先生と学ぶマインドフルネス瞑想と呼吸法
2016年2月27日、東京にてマインドフルネス瞑想と呼吸法を実践的に学ぶイベントが開催されます!ストレス低減のほか、リラクゼーション、そして集中力/生産性の向上などの効果を期待できる瞑想と呼吸法を、自分で使えるようにするための実践的な講座です。
短時間で実践、観察を繰り返すことで心と体で理解しますので、あなたも日常的に瞑想と呼吸法のテクニックをセルフケアとして活用できるようになります。
シヴァナンダヨガ サラスワティ先生に聞くヨガと瞑想を知る旅
第二回目:マインドフルネス瞑想 – 日常に取り入れやすいシンプルな瞑想法
第三回目:マインドフルネスとヨガ – 共通点から見る瞑想の効果と可能性
第四回目:スタジオヨガから一歩深めるには?上達のポイントは瞑想と呼吸の統合にあり