ヨガの八支則も最終段階です。八支則は至福をもたらす8つの段階、プロセスとしてヨガを支える大切な哲学です。今回は八支則5から8をそれぞれ見ていきます。正直にヨガの言う悟りはわかりませんが、ヨガを深めてきた過程で得られた人生の変化についても触れています。
これまで4つの八支則である日常での心得、基本動作。そしてアーサナ、呼吸法などを見てきましたが、ここからは瞑想、そして瞑想を通して自分と向き合い、至福へ至る精神的な部分に入ってきます。
瞑想と統制で至福へ
八支則5. プラティヤハーラ(Pratyahara)/ 制感、感覚の制御
プラティヤハーラとは、サンスクリット語で「向けて集める」という意味です。
瞑想状態を深めていく中で、意識をご自身の内側に向けていく段階です。ですが、まだ、どこに向けて集中したらよいかわからない状態。心ってどこ?という状態なので、瞑想をしているときに、例えば遠くで名前を呼ばれたら、すぐに反応してしまいます。この段階では、まずは感覚を制御することに努めます。
ラジオのチューナーを合わせるように、外界へ向かう心や感覚器官を、それぞれの対象から離して、あるがままに自分の内側を見つめていくこと。心が感覚を制御できるようになると、外からの余計な刺激が減り、安定した精神状態を保つことができます。
これ以降の、「ダラーナ」「ディアーナ」「サマーディ」の3段階で、はっきりと区別がつかない心理的な流れで瞑想状態が深まっていきます。これら3つの段階を合わせて、「サンヤマ Samyama(統制)」と呼ばれます。
八支則6. ダラーナ(Dharana)/ 凝念、集中
一心に念を凝らすことです。
5のプラティヤハーラで、ラジオのチューナーを“合わせよう”としていたとすると、ダラーナでは、ラジオのチューナーが“少しずつ合ってくる”段階”です。ですが、まだ、行ったり来たりします。完全な自分自身の意識の安定を目指し、対象物一点に心を留め、そこから意識を動かさないように努めます。
何か一点(ろうそくの炎などでも構いません。)に集中することで、完全な意識の安定を目指します。
八支則7. ディヤナ(Dhyana)/ 瞑想、静慮
ここでやっとラジオのチューナーが“合っている”瞑想状態です。
日本では、いわゆる“瞑想”が「禅」として海外にも伝わっていますが、元を辿ると、「ディヤナ」というサンスクリット語の瞑想が中国に渡り、中国で瞑想が「禅那(ぜんな)」という漢字に充てられ、そこから徐々に日本に「禅」として伝えられた、という説があります。
このディヤナ(瞑想)の段階では対象物に“集中している”、という意識もなく、行けばいいところがもうわかっている、つまりラジオのチューナーもいらない状態です。5のプラティヤハーラ(感覚制御)と6のダーラナ(集中)が深まり、自分と他とを分け隔てなくなった、深い静かな状態で、雑念がなく、無に近い状態です。
八支則8. サマディ(Samadhi)/ 三昧
瞑想がさらに深まり、転々と移り変わる思考や、あらゆる思索が静止します。
「集中する、集中している」などの概念はなく、いわゆる悟りの境地です。これ以上ない至福の喜びを感じられる境地と言われています。
ヨガを深めて変わったこと
ヨガの言う「悟り」「至福」とは何でしょう?現代に生きる私たちは想像しにくいですよね。
書いている私も、悟りの境地には達していないというのが正直なところです。しかし、スタジオでやっていたヨガから日常に深くヨガを取り込んで、確かに変化はありました。
私は女優という職業柄もあるのですが、他人から人と比べられてしまうことがしばしば。正直に他人からの評価に悩むこともありましたし、自分には何が足りていないのか?と自問自答を繰り返していました。
しかし、ここ数年は違います。人それぞれに生きる場所があり、活かされる場所があることに気づきました。今では当たり前ですが、この単純ながら奥深い事実に気づけたことで何かと比較してしまう思考の過程がなくなりました。
結局、目で見える外的なことに解決策を求めてはいけないのです。自分の中に全ては答えがある、とはよく言ったもので、これは私が経験した上記のことなのではないかと思っています。
これがヨガの言う幸せなのかはわかりません。しかし、ヨガを深めてきたここ数年、これまで見てきた景色が変わったことは確かです。
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ヨガの八支則も最終段階です。八支則は至福をもたらす8つの段階、プロセスとしてヨガを支える大切な哲学です。今回は八支則5から8をそれぞれ見ていきます。正直にヨガの言う悟りはわかりませんが、ヨガを深めてきた過程で得られた人生の変化についても触れています。